抄録
多摩川水系の農業水路において,リーチ内の瀬-淵および微生息場所が水生昆虫の多様性に及ぼす効果を検証した。その結果,リーチ内のα多様性とβ多様性はランダムに生じるものと有意な差はなく,また種組成の顕著な差異も見られなかった。とくに瀬特有の種組成の発達が見られず,農業水路の掃流力の小ささや土砂供給の多さがその要因として推察された。このため,掃流力が大きい河床勾配の大きい区間の保全が重要であることが考えられた。また,農業水路の水生昆虫群集の保全にはより上位の生息場の階層である水路周辺の土地利用や河川との位置関係のようなリーチ間に生じる多様性についてもさらなる検証が必要であると考えられた。