抄録
ベトナム社会主義共和国では,ベトナム戦争後大規模に行われた少数民族の定住化政策や森林分配事業によって土地利用形態が大きく変容しており,中部山岳地域では多くの少数民族農村においてアカシア林業のモノカルチャー化が進んでいる。本研究では,少数民族農村を対象とした世帯単位での悉皆聞き取り調査と統計分析によって,住民の生業構造の特徴を精緻に抽出し,生活の困窮化や生業の脆弱化といった課題を検討した。その結果,アカシア林業に特化した土地利用を行っている構造と,それによって住民が抱えている潜在的リスクが明らかになった。さらに,自家消費用作物の不足やアカシア林業に依存した副次的な生業活動の存在が明確化された。