生体にとって適切な範囲を超えた機能的な力が,メカニカルストレスとして顎口腔系に与える影響について検討されている.そのような中,メカニカルストレスが加わったと思われる症例で,口腔外骨症があるものとない場合があり,生体応答には個体差があると考えた.今回,当院に来院した顎機能不全の疑いがある120 名の被験者から,メカニカルストレスに対する生体応答と臨床的な兆候に関して調査した.調査の結果から,自覚症状の発現に差が生じた.加えて症状を発しない症例では,歯と歯周組織に異常や外骨症を呈していた.顎口腔系は過剰な力に対して,受けた力を消耗するため各組織が破壊し代償する形で適応するものと,環境に対して生体を増強し抵抗するものが確認された.この差を十分考慮しながら治療計画を立てる必要があると思われた.今後,パラファンクションへの対策や適切なTCH のコントロールについて検討する必要がある.また,このような調査を多施設で行えれば,症状の発現機序に関する根拠が得られ,よりよい処置が提供できるようになると思われた.【顎咬合誌 38 (1・2):26-33,2018】