抄録
農山村地域では,豊富な資源を活用した再エネ開発の進展が期待される一方で,開発に対する地域の主体性の不足が課題となっている。本研究は,熊本県小国町のわいた地熱発電所を事例とし,自治体,住民および開発事業者へのインタビュー調査を通じて,地域貢献型地熱発電事業のスキームおよび自治体と住民の役割を明らかにした。同事例では,地区住民出資の合同会社が事業主体となり,発電所の運営管理を外部事業者に委託するスキームのもとで,住民が意思決定権や売電収益の使途決定権を確保している。また,行政は二つの協議体を活用して事業者と住民の利害調整を行うことで,便益の地域還元と開発に対する地域受容性の向上を実現している。