2013 年 67 巻 1 号 p. 10-17
結晶性ケイ酸カルシウム水和物であるトバモライトの生成機構を解明することを目的に、CaO-SiO2-H2O系におけるγ-Al2O3および石膏の添加効果とその作用メカニズムを、in situ XRDと固体NMRを用いて検討した。γ-Al2O3および石膏ともにトバモライトの生成を促進するとともに、同時添加において著しい促進効果が認められた。これらのメカニズムとして、Al3+イオンは珪石溶解抑制により、SO42-イオンはCa2+イオンの平衡濃度を高めることにより、トバモライト生成前に存在しているC-S-HのSi四面体鎖の平均鎖長の増大とcross link(Q3)の生成を抑制したと考えられた。27Alおよび29Si固体NMR解析から、両添加物によるC-S-Hの構造変化も認められ、トバモライト生成への影響が推察された。