2017 年 71 巻 1 号 p. 272-279
アルカリシリカ反応(ASR)による劣化は、反応性骨材内部で生成するアルカリシリカゲル(ASG)が引き起こす膨張に起因することは明らかなものの、コンクリート内部での膨張圧およびこれに伴う膨張ひび割れの発生機構は完全な解明に至っていない。そこで、急速膨張性の安山岩を用いて単純な系のモデル試験体を作製し、促進養生後の試験体切断面のASG分布およびひび割れを観察した。その結果、ASRに伴う膨張圧は反応性骨材単体で生じるのではなく、反応性骨材周囲に緻密なセメントペーストマトリクスが、反応性骨材外部へのASGの滲出を抑制することによって、ASGが反応性骨材内部に累積されて生じると考えられた。