茶業研究報告
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総説
日本の釜炒り茶
坂本 孝義
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2018 年 2018 巻 125 号 p. 1-6

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抄録

静岡県出身で且つ宮崎県において茶の試験研究の経験を持つ森薗市二氏は,釜炒り茶のことを正しく把握している一人と考えられる。氏の資料によると,「佐賀,長崎を中心とする嬉野製と,熊本,宮崎を中心とする青柳製は,当時は上流階層の飲料に供する上級茶で,一般庶民の飲用する釜炒り番茶類は,九州,四国,中国各地方で,広くつくられていた」16) という記載もある。釜炒り茶と呼ばれる茶には嬉野製や青柳製と呼ばれる緑茶に分類される釜炒り茶と,番茶に分類される釜炒り日干し茶が存在していたことが伺え,しかも一般的には,これらは区別されていなかったようだ。しかし,江戸時代末期から明治時代にかけて茶の輸出が盛んになり,外貨獲得のための商品として茶が脚光を集めると,釜炒り日干し茶が日本茶の評価を悪くするという理由で禁止されるが,釜炒り日干し茶が釜炒り茶と誤認されていたためか釜炒り茶が禁止されてしまう。その一方で,釜炒り茶の製造の際に効率良く乾燥するための乾燥用道具が考案・導入された。乾燥用の道具としては茶焙炉,室,印度焙炉があった。

日本茶の大半は蒸し製であり,蒸し製は摘採時期や選別方法の違いから煎茶,番茶というように分類される。一方で,釜炒り茶は今日では九州の一部の地域で生産されている茶であり,しかも生産量も少ないが故に品質格差を無視して適正に評価されていないことがあると考える。番茶とみなされる釜炒り茶は,日干し製法という製法も含めて釜炒り茶と定義されてしまうことで適正に評価されない一因と考える。

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© 2018 日本茶業学会
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