茶業研究報告
Online ISSN : 1883-941X
Print ISSN : 0366-6190
ISSN-L : 0366-6190
総説
我が国におけるチャの遺伝資源を利用した研究のこれまでと新たな展開
谷口 郁也
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 2019 巻 128 号 p. 1-8

詳細
抄録

わが国は,明治以降,茶業の発展を目指した育種を戦略的に進めるために国内外の遺伝資源を積極的に収集・保存してきた。農研機構果樹茶業部門は14ヶ国・地域から収集された世界最大規模のチャ遺伝資源を保有しており,これまでも多くの品種の育成に活用されてきた。育種をはじめとして様々な研究に遺伝資源を利用するためにはその特性を的確に把握することが重要であり,近年ではDNAマーカーを利用した遺伝的多様性の評価が盛んに行われてきている。農研機構のチャ遺伝資源の多様性について,SSRマーカーを用いて解析した結果,国内由来の系統と海外由来の系統には大きな遺伝的な分化が見られた。遺伝資源全体の遺伝的多様性からすると,国内由来の系統の遺伝的多様性は限られいる。海外由来の系統の方が多様性の程度はかなり高いため,チャ育種の遺伝的多様性拡大にとっては海外から導入した遺伝資源の活用が重要と考えられる。SSRマーカーによる遺伝子型データを指標として農研機構チャ遺伝資源のコアコレクションが選定されている。このコアコレクションは,チャの持つ遺伝的多様性をふまえた研究を行う上で非常に有用なセットであり,今後は,コアコレクションと日々進歩しつつあるゲノム情報技術を活用して,新たな素材の開発,新規有用遺伝子座の同定及び新たな育種手法の開発が進展することが期待される。

著者関連情報
© 2019 日本茶業学会
次の記事
feedback
Top