2021 年 2021 巻 132 号 p. 25-31
裂傷型凍害は,夜間の氷点下条件で幹が凍結し形成層に氷片が形成され,そこに根が吸収した水分が供給されることで氷片が肥大し裂傷が発生すると考えられていた。本研究では,これまでの水分供給経路に加え,新たな水分供給経路を明らかにした。
初めに,枝条を氷点下処理した際に樹皮から漏出する液体の由来を検討した。漏出液の成分分析を行ったところ,漏出液はテアニン及びショ糖等を含んでいたことから,枝条内部から漏出した樹液であると推察された。また,漏出箇所を実体顕微鏡で観察すると樹皮に肉眼で観察が困難な微細な亀裂が生じていた。
次に,裂傷が生じる夜間の暗黒条件における形成層の氷片への水分供給経路を検討した。暗黒条件でセル苗における吸水の有無及び蒸散量を調査したところ,吸水は認められたものの蒸散量が極めて少なかったことから、根からの水分吸収以外の水分供給経路が存在する可能性が示唆された。そこで,酸性フクシン溶液を吸収させたロックウールに枝条を挿して人為的に氷点下処理を行ったところ,地際部に裂傷が発生し,当該裂傷部のみ酸性フクシン溶液が浸透した。これらのことから,裂傷発生の要因となる形成層氷片への水分供給は,根からの吸水の他に,氷点下によって樹皮に発生した微細な亀裂を介しても行われていることが明らかとなった。
これまでの試験の結果,裂傷型凍害の発生は,樹体各所に氷片が形成され樹体全体に微細な亀裂が生じ,地際部付近の微細な亀裂を介し土壌表層の水分が形成層の氷片に供給されることで氷片が肥大し、地際部限定的に裂傷が生じると推察された。