抄録
1.発芽床の最適pHはかなり酸性の5.2附近で,一方花柱のpHは大略5.0~5.2を宗し,適濃度を有している。
2.開葯直後において,花紛の発芽力は最も旺盛で,その後第2次の発芽期を経て次第に低下する。
3.開花2~3日前の蕾の葯中の花粉は,発芽力を示さないが,開花前日においてはかなり発芽力を有するものもあり,品種間の差異は著しい。
4.花粉の不稔粒含有率は,3倍体以外の品種は,時期的並びに長短両雄蕋別の差異は極めて僅かで,考慮を要する程のものでなく,大略品種により一定していると思われる。
5.他家花柱組織を発芽床として,品種の親和性を調べた結果と,各品種の初期における落顆状況と一致し,この方法で或る程度品種の親和性を検討し得るものと思われる。
6.自家花柱組織を発芽床とする場合は,他家花柱組織を発芽床とする場合に比し,花粉の発芽は抑圧されている。しかしこの現象は柱頭以外の他の部によつて抑圧されているものと思われる。花の熟度との関係においては,開花2~3日前の過程において最も良好な発芽力を示した。いわゆる自家授粉と準自家授粉とは生理学的にみてかなり異なつでいるものと思われる。