茶業研究報告
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茶樹の個体選抜の段階における諸形質の相関関係と遺伝分析(第1報)
28年度交配個体の発芽期・生育収量・品質・葉の大きさ等の統計遺伝分析
鳥屋尾 忠之安間 舜松下 繁家弓 実行
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1964 年 1964 巻 22 号 p. 1-8

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抄録

相関分析と二親交配後代の分散分析による統計遺伝分析を,茶の個体選抜の段階で行なって,育種目標に合った合理的な交配組合せの選定ならびに早期検定法確立のための基礎を得ようとした。
アッサム種と日本種の交雑後代で発芽期・品質・一番茶収量・芽数・百芽重・生長量・樹高・葉長・葉長の変異・葉厚の10形質の間の表現型相関をみたところ,これらの形質は 1)発芽期,2)品質,3)生育収量に関与する形質の3種に分けられ,相互の間にはほとんど関係は認められなかった。しかし生育収量に関与する形質の間ではかなり密接な関係があり,特に生長量(一番茶後刈り落とし,その後一年間の生長量)と翌年の一番茶収量との間には高い相関があり,隼長量の多少で収量の予想のできることがわかった。
アッサム雑種の相互交雑後代で二親交配後代の遺伝的分析を行ない,発芽期・樹高・生長量・葉長・葉長の変異・枝の節間長・枝の太さの7形質について表現型相関・遺伝相関・環境相関と遺伝力を推定した。この分析では発芽期の早いことは遺伝的にも環境的にも樹高・枝の太さ・節間長を大きくし,また,葉長とその変異を遺伝的には小さくし環境的には大きくする。同様に生長量とは遺伝的には関係ないが,環境的には早いものほど大きいことが推定された。これらの形質の遺伝力が推定され,発芽期は非常に高く,その他の形質では比較的低い値であった。
つぎに発芽期・樹高・生長量・葉面積・葉型指数の5形質で,遺伝分散が相加的遺伝分散と非相加的遺伝分散(優性偏差に基づく分散)に分割された。狭義の遺伝力は発芽期と葉型指数で高く,樹高と葉面積では非常に低かった。そして発芽期と葉型指数の遺伝子は完全優性に近く,樹高と葉面積とそしておそらく生長量を支配する遺伝子作用には大きい超優性の存在が認められた。
上述の結果に基づいて,育種目標に応じた交配親の合理的選定について論義を行なった。

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