茶業研究報告
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茶樹に対するアンモニア態室素と硝酸態窒素の比較(第1報)
窒素濃度の影響
石垣 幸三
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1971 年 1971 巻 35 号 p. 57-64

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抄録

砂耕法によって,茶樹の生育と化学成分に及ぼすNH4-NとNO3-Nの比較試験を行なった。すなわち,1963年5月から1964年9月まで,べにほまれ2年生苗を供試し,両形態とも,窒素濃度をそれぞれ,25,50,100ppmとし,それに無窒素区を加え,計7区の試験区を設けて試験した。その結果を要約すると次のとおりである。
1.生育は,全般的にNH4-N区のほうがNO3-N区に比べて良好であった。初年度は,いずれの形態も窒素濃度の増加に伴って生育がよかったが,2年目ではいずれの形態も,濃度の高い区は生育が悪くなった。
2.同化量および呼吸量は,全般的にNH4-N区のほうがNO3-N区に比べて多かった。
3.酵素力価として,ポリフェノールオキシダーゼ力価とカタラーゼ力価を調べたが,いずれも全般的にNH4-N区のほうがNO3-N区に比べて高かった。
4.茶樹の全窒素含量は,NH4-N区のほうが,NO3-N区に比べて多く,かつ,窒素濃度の増加による増加割合も高かった。
5.無機成分の吸収についてみると,窒素の形態によって差が認められた。最も著しい差を示したのはマンガンとアルミニウムで,いずれもその含量はNH4-N区のほうがNO3-N区に比べて著しく多かった。カリ含量は窒素濃度の増加に伴って減少したが,その減少割合はNH4-N区のほうが高かった。NH4-N区における石灰含量は,窒素濃度の増加に伴って減少した。苦土含量はいずれの形態の場合も,窒素濃度の増加に伴って減少した。
6.クロロフィル含量はNH4-N区のほうがNO3-N区のものに比べて多かった。
7.還元糖含量はNH4-N区のほうが多く,非還元糖は逆にNO3-N区のほうが多かった。
8.タンニン含量は全般的にNH4-N区のほうが多かった。また,NH4-N区では窒素濃度の増加に伴ってタンニン含量が増加したが,NO3-N区では,逆に,窒素濃度の増加に伴って減少した。

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