抄録
1. 裂傷の抵抗性判定のために用いた人為裂傷発生法は,裂傷の抵抗性判定に十分適用できた。
2. 耐凍性判定のために用いた電導度法および褐変法は耐凍性の判定に十分適用できた。
3. 裂傷の発生に及ぼす当日の気温の日較差の影響については,昼間の高温が裂傷の発生を助長することはなく,裂傷の発生は発生時の夜の低温に影響された。
4. 裂傷の発生に及ぼす地温の影響については,地温の高いほうは低いほうに比べ,発生率ではわずかに多い傾向であったが,裂傷の大ぎさは明らかに大きく,低温処理の時間が長くなるにつれて差は大きくなった。
5. 裂傷の発生に及ぼす土壌水分の影響は大きく,乾燥区は,中,多湿区に比べて発生が少なかった。
6. ハードニングに及ぼす低温の影響についてみると,低温遭遇1週間後には耐凍性の強化が認められ,2週間および3週間後には耐凍性の強化が顕著に認められた。
7. ハードニング促進効果に及ぼす低温と肥培条件の影響については,ハードニングの進行中期ごろでは肥培中および良区で低温処理の効果が高く現われ,肥培不良区では効果はほとんどみられなかった。
8. ハードニング過程において,一時的な気温の上昇によりディハードニングの現象が起るか否かについて検討した結果,25℃で1週間処理しても,ハードニングの進行が緩慢となるだけで耐凍性の低下はみられなかった。
9. 秋から冬にかけての幼茶樹の幹の耐凍性および裂傷の抵抗性獲得の推移についてみると,ハードニングの進行は10月中旬以後11月上旬までは比較的緩慢であり,11月中旬ごろから急に強くなる傾向がみられ,裂傷の抵抗性もほぼ同じ傾向であった。