茶業研究報告
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試験管内挿木法を用いたチャの大量増殖
腋芽の生育に及ぼす各種ホルモンの効果
中村 順行柴田 真里子
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1990 年 1990 巻 72 号 p. 9-17

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抄録

組織培養法を用いたチャの急速大量増殖技術を確立するために,試験管内挿木法を用い,腋芽の生育に及ぼすホルモンの種類及び濃度の影響を検討し,その最適条件を明らかにした。
1) オーキシンの添加では,挿木した腋芽の中でシュートの伸長したものの率はIAA,IBA,2,4-Dとも添加濃度を高めるにつれ低下したが,シュートの生育はIBA>IAA>2,4-Dの順に優れ,最適濃度はいずれの種類でも0.1mg/lであった。
2) サイトカイニンの添加では,各々の種類や濃度により腋芽の生育に対する反応が異なった。シュートの伸長に対して,アデニンは効果が認められなかったが,カイネチンでは1.0mg/l以上で,BAでは1.0mg/lで,2iPでは3.0~30.0mg/l程度の添加で生育が優れた。また,伸長するシュートの本数を顕著に増加させることのできるホルモンはBAであった。
3) 各種のホルモンを組合わせた結果,シュートはIBA(0.1mg/l)+BA(1.0mg/l)+GA3(5.0mg/l)あるいはIBA(0.1mg/l)+BA(0.1mg/l)+2iP(5.0mg/l)+GA3(5.0mg/l)の組合せで伸長が促進された。この時,2ヵ月間でシュートは大きさ32mm,葉数7.4枚程度に生育した。また,いずれの組合せでも腋芽の生育はBA濃度に影響を受け,高濃度添加区ではシュートの生育は抑制されるがその本数は増加する傾向にあった。
4) 以上のことから,IBA(0.1mg/l)+BA(1.0mg/l)+GA3(5.0mg/l)のようなホルモン条件で継代培養を繰り返すことにより,1本の外植片から1年間で47000本程度の増殖が可能と考えられた。

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