茶業研究報告
Online ISSN : 1883-941X
Print ISSN : 0366-6190
ISSN-L : 0366-6190
煎茶用品種'むさしかおり'の育成
内野 博司田中 江里岡野 信雄船越 昭治京極 英雄中島 健太本多 勇介淵之上 康元田中 萬吉米丸 忠北田 嘉一
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 2000 巻 89 号 p. 45-58

詳細
抄録
煎茶用品種'むさしかおり'が埼玉県茶業試験場 (農林水産省茶育種指定試験地) によって育成された。'むさしかおり'は1967年に種子親'やぶきた'と花粉親27F1-73'の交配によって得られた実生群から選抜された。
1990年から1996年に埼玉33号の系統名で16場所で栄養系適応性検定試験,裂傷型凍害及びもち病の特性検定試験が実施された。
その結果,優良と認められ1997年に茶農林46号'むさしかおり'として命名登録された。
樹姿は開張型で樹勢は強い。成葉の大きさは'やぶきた'よりも小さい。一・二番茶の収量は'やぶきた'と同等か多い。幼葉はやや軟らかく光沢のやや多い緑色である。
挿し木発根性及び本圃での活着は良好である。一番茶の摘採期は,寒冷地では'やぶきた'より2~3日,温暖地及び暖地では3~6日遅い中晩生である。耐寒性は青枯れ抵抗性,裂傷型凍害抵抗性とも'やぶきた'より優れる。
製品の色沢は濃緑であり細くよれ,すっきり爽やかな香気,濃厚な水色・旨味に特徴があり優秀である。
炭疽病の被害は'やぶきた'より少なく中程度である。
耐寒性が強いので,関東茶産地及びこれと気象条件の類似する東海・近畿・四国・九州の山間冷涼地で,寒害発生の常習地帯に適する。
著者関連情報
© 日本茶業技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top