CHEMOTHERAPY
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産婦人科領域におけるTA-058の基礎的・臨床的研究
張 南薫福永 完吾日高 輝雄田原 隆三鈴木 利昭河合 清文国井 勝昭
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1984 年 32 巻 Supplement2 号 p. 706-716

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抄録
新しいペニシリン系抗生物質TA-058について産婦人科領域で検討を行い, 以下の結果を得た。
1. 抗菌力: 産婦人科臨床分離株15種70株のMIC分布は, 1.56~3.13μg/mlに27.2%の感受性株があり, 一方, 100μg/ml以上の耐性株も30%あった6
2. 吸収, 排泄: 1g静注後の30分値は34.7μg/ml, 半減期78分, AUC値64.6μg/ml・hr.であった。6時間内尿中排泄率58.1%であった。
3. 骨盤内性器組織内濃度: 1g静注後の静脈血清, 子宮動脈血清, 子宮各部位, 付属器組織内濃度を測定し, その薬動力学的解析を行った。最高濃度到達時間 (Tmax) は各組織で42.9~52.6分, 半減期 (T1/2) は子宮動脈56.8分, 各組織45.2~55.3分, 最高濃度 (Cmax) は子官動脈血清24.4μg/ml, 各組織10.6~16.5μg/g, 濃度曲線下面積 (AUC) は血清74.5μg/ml・hr., 各組織25.8~41.4μg/ml・hr.で良好な移行を示した。
4. 胎盤移行性: 1g母体投与後, 良好な胎盤移行を示し, 臍帯血清, 羊水に母体血清の約25~30%の移行が認められた。
5. 母乳中移行は低かった。
6. 臨床成績: 10例の産婦人科的感染症 (7種疾患) に1回1g, 1日2~3回投与で9例に臨床, 効果を認め, 副作用は少なかった。
以上の諸成績からTA-058の産婦人科領域における有用性を認めた。
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© 社団法人日本化学療法学会
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