抄録
新規合成化学療法剤grepafloxacin (GPFX) のin vitroおよびin vivoにおける細菌学的評価をnorfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX) を比較薬として検討し, 以下の結果を得た。
GPFXはグラム陽性菌群, グラム陰性菌群および嫌気性菌群に対して幅広い抗菌スペクトルを有し, その抗菌力はグラム陽性菌群および嫌気性菌群においては, 試験薬剤中最も優れており, グラム陰性菌群ではNFLXおよびOFLXよりも優れていた。
臨床分離株に対するGPFXの抗菌力は, グラム陽性菌群およびMoraxella catarrhalis, Acinetobacter calcoaceticus, Haemophilus influenzaeにおいては最も優れており, Proteus属を除く, 他のグラム陰性菌群ではCPFXとOFLXの中間の抗菌力を示した。OFLX耐性を示すStaphylococcus aureus, Enterococcus faecalisおよびPseuaononas aerugimsaにおける抗菌力は他剤と同様, 抗菌力の低下を示した。
GPFXの抗菌力に及ぼす諸因子の影響は S. aureus, Escherichia coli, P. aeruginosaおよびA. calcoaceticusを用いて検討したが, いずれの菌種においても培地の影響, 接種菌量, 馬血清添加および金属イオンの影響は認められなかった。培地pHの影響ではアルカリ性側で抗菌力の増強がみられた。
S. aureus, E. coliおよび P. aeruginosaの増殖曲線に及ぼすGPFXの影響を検討したが, いずれの場合も1MIC以上で殺菌的に作用した。
GPFX作用後の形態変化を観察したところ, S. aureusにおいては菌体の膨化が, E. coliにおいては菌体の伸長が認められた。またP. aeruginosaにおいてはスフェロプラスト様構造および溶菌像が観察された。A. calcoaceticusにおいては菌体の伸長と同時に膨化が認められた。
マウス実験的全身感染症に対するGPFXの治療効果を S. aureus, Stnptococcus pneumoniae, E. coli, Klebsiella pneumoniae, P. aeruginosa, A. calcoaceticuを用いて検討した。S. aureus, S. pneumoniae, A. calcoaceticusにおいては最も優れた治療効果を示し, 他の菌種についてはCPFXと同様の治療効果を示した。
マウス実験的呼吸器感染症に対するGPFXの治療効果では, K. pneumoniaeにおいてはOFLX と同程度の治療効果を示し, S. pneumoniaeに対しては最も優れた治療効果を示した。