日本化学療法学会雑誌
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耳鼻咽喉科領域におけるarbekacinの組織移行に関する研究
菅澤 正高砂 江佐夫
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1999 年 47 巻 9 号 p. 553-557

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抄録

頭頸部腫瘍手術施行患者を対象にarbekacin (ABK) の血清中動態および耳鼻咽喉科領域における組織内移行を検討した。ABK, 100mgまたは200mgを30分かけて静脈内点滴投与したときの最高血清中濃度は, それぞれ8.1μg/mlおよび14.9μg/mlであり, その後それぞれ1.6hおよび2.4hの半減期で消失した。また, 分布容積は, それぞれ11.1Lおよび12.5Lであった。耳鼻咽喉科領域における組織内濃度を測定したところ, 鼻腔粘膜, 口腔粘膜, 咽頭粘膜, 胸鎖乳突筋, 頸部脂肪組織等の各組織内濃度と同時点における血清中濃度との比は0.10~0.56であり, 組織に占める細胞外液量比率に近似し, これらの組織においてABKが主として細胞外液に分布していることが示唆された。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌が存在する細胞外液中濃度を考えると, 100mg投与, 200mg投与いずれの場合もMIC90以上の濃度を維持しており, ABKは十分有効性を発揮しうると考えられる。

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