抄録
Telithromycin (TEL) の遺伝毒性および抗原性試験, さらに特殊臓器毒性試験として腎毒性および聴覚器毒性試験を実施した,.TELの遺伝毒性試験として, S9mix非存在下および存在下におけるネズミチフス菌 (TA1535, TA1537, TA98およびTA100) および大腸菌 (WP2uvrA) を用いた復帰突然変異試験, マウスリンフォーマ (L5178YTK+/-) を用いた遺伝子突然変異試験およびヒトリンパ球を川いた染色体異常試験を行ったが, いずれの条件でも突然変異活性を示さず, 染色体異常誘発性も示さなかった, また, in vivo試験としてマウスにおける小核試験を行ったが, 骨髄細胞の染色体または有糸分裂細胞への傷害は認められなかった。TELの抗原性についてモルモットにおける能動全身性および受身皮膚アナフィラキシー反応試験, およびマウスIgE産生試験を実施したが, いずれの試験においてもまったく陽性反応はみられず, TELに対するIgE抗体産生も認められなかった。腎機能に対する影響を調べるために, 正常ラットあるいはglycerolおよびfurosemide投与により誘発される腎障害モデルラットに対する単回経日投与の影響をcephaioridine (CER) の静注群と比較検討した。CER群では明らかな腎障害 (近位尿細管の壊死, 土皮細胞空胞化, 尿細管の拡張) の惹起および増強作用が認められた, TEL群では, 正常ラットおよび腎障害ラットにおいて尿検査または血液生化学的検査のいくつかの項目に軽度の変化が認められたが, 腎臓の病理組織学的検査では, 対照群にもみられるごく軽度の変化であった。また, 正常ウサギおよび制限給水ウサギに単回経口投与した場合, いずれも腎機能への影響は認められなかった。聴覚器毒性を調べるためにラットに4週間経 [投与し, 脳幹誘発反応オーディオメータによる聴覚閾値検査および内耳の病理組織学的検査を行い, kanamycin (KM;i.m.) と比較した。KM群では内耳機能障害を示唆する聴覚閾値の上昇および腎尿細管上皮細胞の変性または壊死が誘発されたが, TEL群では聴覚閾値の変動あるいは内耳の病理学的変化は認められず, 聴覚器への影響は認められなかった。