日本化学療法学会雑誌
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Telithromycinの第I相臨床試験
単回および反復経口投与
保田 国伸石原 浪砂鈴木 比紅江三橋 晴美
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2003 年 51 巻 Supplement1 号 p. 210-223

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抄録
新規ケトライド系経口抗菌薬telithromycin (TEL) の安全性, 腸内細菌叢におよぼす影響ならびに体内動態を検討する目的で, 日本人の健康成人男子76名 (単回投与52名, 反復投与24名) を対象に第1相臨床試験を実施した。TEL50, 100, 200, 400, 600, 800および1, 200mgの空腹時単回経口投与試験では, 重篤な有害事象の発現や臨床的に問題となる所見は認められず, TELの忍容性は良好であった。TELは経口投与後速やかに吸収され, 血漿中TEL濃度は, 投与後1.8~2.5時間に最高濃度 (Cmax) に達した。本邦での推定至適臨床用量である600mgを単回投与したときの血漿中TEL濃度は, 投与後2.5時間にCmaxに達し, 消失相血中半減期 (T1/2β) は9.6時間であった。そのときのCmax, 血漿中濃度一時間曲線下面積 (AUC0-24h) および投与後24時間濃度 (C24h) は, それぞれ0.91μg/mL, 4.00μg・h/mLおよび0.012μg/mL, であった。投与後24時商までの見かけの全身クリアランス (CL/F) および腎クリアランス (CLR) は, それぞれ163.4L/hおよび11.3L/hであった。TEL400, 600および800mgの1日1回10日間反復経口投与試験では, 重篤な有害事象の発現や臨床的に問題となる所見は認められず, 忍容性は良好であった。TEL反復投与による腸内細菌叢への影響として, 好気性菌総数に一過性の減少がみられたが, 嫌気性菌総数に大きな変動は認められなかった。また, Clostridium difficileは認められず, 同毒素も検出されなかった。600mgの反復投与後10日目のCmax, AUC0-24h, C24hおよびCL/Fは, それぞれ1.18μg/mL, 7.47μg・h/mL, 0.039μg/mLおよび86.1L/hであった。投与1日目に比べ, 10日目ではCmaxは約1.4倍, AUCは約1.5倍に増加した。また, 10日目の白血球中TEL濃度は, 投与後2および6時間に53.05および53.94μg/mLを示し, 血漿中濃度のそれぞれ約73および99倍であった。600mg反復投与10日目の投与後24時商までのTELの累積尿中排泄率 (Ae(0-24h)) は12.8%, CL, は9.6L/hであった。以上, 健康成人男子を対象に実施したTELの50~1, 200mg単回投与, 400, 600および800mgの1日1回10日間反復投与による第I相臨床試験の結果から, TELの体内動態の特性が明らかとなり, TELの安全性に問題は認められなかった。
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