2017 年 70 巻 1 号 p. 23-29
高校生の火成岩組織に関する知識と火成岩標本の鑑定能力を調査した.90人の生徒を対象に深成岩と火山岩のスケッチを示し,火成岩のタイプ(深成岩か火山岩)とそれぞれの組織名(等粒状組織と斑状組織)を質問した.火成岩のタイプについては98.9%の生徒が正答を与え,組織名については84.4%の生徒が正答を与えた.また,花崗岩の標本(研磨面あるいは非研磨面)あるいは写真を示し,標本あるいは写真が深成岩であるか火山岩であるかを尋ねたところ,研磨面については30人中の53.3%,非研磨面については30人中の33.3%,写真については30人中の40.0%の生徒が正答を与えた.これらの結果は,生徒は火成岩の組織に関する知識を獲得していたが,その知識が火成岩標本の鑑定能力に結びついていなかったことを示している.標本における組織を識別するのは生徒にとって難しい.そこで,中学校の火成岩の学習の中で標本を観察する機会を増やすとともに,標本組織の識別能力を向上させるための授業方法の開発が望まれる.