抄録
鶏胸肉の肉質改良を目的として, 除骨時間が及ぼす鶏熟成胸肉の食味性と理化学的および組織学的特性への影響を調べた. 屠殺1, 2, 4, 6, 時間後に除骨し, 0℃で4日間保存した胸肉では, 4時間後に除骨した胸肉がもっとも軟らかく, ぱさぱさ感も少ないと評価された. また, 6時間後のものも4時間後のものと同様に官能的に優れた食味性を有していた. 1および2時間後に除骨した鶏胸肉のドリップ率およびクッキングロスは4, 6, 24時間後に除骨したものより大きいことが判明した. このことは, 1および2時間後に除骨した鶏胸肉が4あるいは6時間後に除骨したものよりぱさぱさ感が大きいことと対応していた. また, 1および2時間後に除骨した屠体から取り出した胸肉の破断応力は6, 24時間後に除骨したものに比べて有意に高いことが認められ, 官能検査による軟らかさの評価と良く対応していた. 組織学的な観察から, 8もしくは16時間後に除骨した胸肉浅胸筋の筋原線維Z線間の距離は, 1時間後に除骨したものと比べ有意に長いことが明らかとなった. また, 後者の筋原線維には屈曲部分が認められ, 除骨後に硬直が進行したことが推察された. さらに, 屠殺後4時間以降に除骨を行うとZ線の脆弱化が促進され, 胸肉の軟化が速く進行することが推察された. これらの結果から, 屠殺後4時間以降に除骨を行うと保水性の低下が抑制されると同時に軟化が促進され, これまでの鶏胸肉より軟らかくてぱさぱさ感の少ない品質に改良できると結論された.