日本畜産学会報
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73 巻, 2 号
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解説
一般論文
  • 河原 孝吉, 後藤 裕作, 萩谷 功一, 鈴木 三義, 曽我部 道彦
    2002 年 73 巻 2 号 p. 249-259
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    本分析では, 一般的な方法 (RA) とVanRadenが提案した方法 (VRA) から算出した近交係数を比較検討し, 北海道のホルスタイン集団における近親交配の状況と産乳能力の近交退化および育種価への影響を調査した. 近交係数は, 4,630,163頭の血縁情報を使用し, 再帰的アルゴリズムを用いて算出した. 分析では, 第1に, RAと利用可能なすべての血縁を使用した場合 (RA0), 第2に, RAを使用し, 基礎世代を1950年以前にした場合 (RA50), 第3として, VRAを使用し, 基礎世代を1950年以前にした場合 (VRA50) の3種類の近交係数を算出した. 産乳量の近交退化と育種価は, 1976から2000年8月までに乳期を終了した検定記録から推定した. アニマルモデルには, 近交退化を説明するための偏回帰を含めた. また, 両親の近交係数を使用し, メンデリアンサンプリング分散を補正した. VRA50は, RA50と比較し, 平均近交係数のレベルを高く推定した. RA50とVRA50は, 計算時間の短縮に効果があった. 1960, 1970, 1980, 1990および2000年生まれの雌牛の平均近交係数は, VRA50で各々0.26, 0.56, 1.23, 1.89および4.18%, 種雄牛は各々0.31, 0.43, 0.77, 1.97, および5.14%であった. 1971-1980, 1981-1990および1991-2000年の各期間に生まれた雌牛の年あたり近交係数平均上昇量は, 各々0.07, 0.06および0.22%/年, 種雄牛は各々0.03, 0.12および0.45%/年であった. RA0はVRA50と比較し, 近交退化量を若干低く推定した. 乳量, 乳脂量, 乳タンパク質量およびSNFの近交退化は, VRA50において各々-24.8, -0.9, -0.7および-2.1kgであった. RA0とVRA50の近交係数で補正された育種価間には, 雌牛および種雄牛ともに0.999以上の相関が存在した. 以上から, VRA50から算出された近交係数は, 遺伝評価や育種計画に十分利用可能なものと推察された.
  • 師 嘉, 細井 栄嗣, 原田 佳典, 三宅 俊三, 阪田 昭次, 篠田 稔彦, 小澤 忍
    2002 年 73 巻 2 号 p. 261-264
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    1995年, 見島に飼育されていた雌牛頭数は89頭で, これらは6つの母系に分類された. 6系統のうち5系統から各2頭ずつ選び, ミトコンドリアDNAのD-loop領域における塩基配列を調べた結果, その変異から見島牛母系は2つのハプロタイプに分類された. すなわち, よしまき系, かめきち系, たかただ系の3系統はM1に, みまつ系, しらうめ系の2系統はM2に分類された. このように見島牛母系5系統は2つの遺伝子型に集約され, 遺伝的多様性はきわめて小さいことが明らかになった. M2に分類された母系の遺伝子頻度は, 見島牛雌牛全体の14.6%を占めるに過ぎず, 早急の保護対策が必要であると思われる.
  • 西田 武弘, 樋口 浩二, 上田 宏一郎, 栗原 光規, Agung PURNOMOADI, 柴田 正貴, 寺田 文典
    2002 年 73 巻 2 号 p. 265-271
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    低栄養条件下におけるヤギの胎子数が母体の血漿ホルモン濃度, 子宮動脈血流量および妊娠子宮への正味養分取込量に及ぼす影響について検討した. ザーネン種妊娠ヤギ10頭 (平均体重43.1±14.6kg) を用いて, 妊娠105日目に全身麻酔下で超音波血流計プローブを子宮動脈に装着し, カテーテルを子宮静脈および頸動脈へ挿入した. 単胎ヤギ (n=4) は平均で妊娠119.0日目, 双胎ヤギ (n=4) は妊娠113.5日目および多胎ヤギ (胎子数3, n=2) は妊娠121.5日目において, 3時間ごとに血液を採取し, 同時に子宮動脈血流量も測定した. その結果, 多胎妊娠ヤギでは, エネルギー出納が大きく負となり, 血漿グルカゴン濃度の上昇および妊娠子宮へのグルコース取込量の増加が観察された.
  • 中西 直人, 山田 知哉, 三津本 充, 三橋 忠由, 相川 勝弘, 村元 隆行, 小澤 忍
    2002 年 73 巻 2 号 p. 273-282
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    ビタミンAの制限が黒毛和種去勢牛の産肉性に及ぼす影響を検討するため, ビタミンA制限区と給与区を設けて開始月齢が10ヵ月齢 (10ヵ月齢試験) と15ヵ月齢 (15ヵ月齢試験) の肥育試験を行った. 10ヵ月齢試験の肥育期間は平均11ヵ月, 15ヵ月齢試験は平均17ヵ月であった. 肥育期間中の日増体重, 飼料摂取量には制限区と給与区で差がなかった. 制限区のロース芯面積, バラの厚さ, 歩留基準値は給与区より大きくなったが, 牛脂肪交雑基準 (BMS) ナンバーと牛肉色基準 (BCS) ナンバーにビタミンAの影響は認められなかった. 枝肉中の筋肉割合は制限区が給与区より有意に大きく, 脂肪割合は制限区が給与区より有意に小さかった. またビタミンAの制限がロース芯面積, 枝肉構成割合に及ぼす影響は, 10ヵ月齢試験より15ヵ月齢試験のほうがより明確であった. 牛成長ホルモン放出因子の負荷による血漿中成長ホルモンの反応は, 制限区の方が給与区より低い傾向を示した. 以上の結果よりビタミンAの制限は枝肉中の筋肉割合を増加させ脂肪割合を減少させる可能性があることが示唆された.
  • 蔡 義民, 藤田 泰仁, 佐藤 崇紀, 増田 信義, 西田 武弘, 小川 増弘
    2002 年 73 巻 2 号 p. 283-289
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    飼料作物から分離した乳酸菌株Lactobacillus plantarum FG1またはPediococcus acidilactici CA25とAcremonium属菌由来のアクレモニウムセルラーゼ (AUS) を供試し, 小規模発酵試験区とポリドラムサイロ試験区を設けて, 麦茶残渣サイレージの調製・貯蔵法および発酵品質を検討した. FG1とCA25菌株はともにホモ発酵型乳酸菌で乳酸生成能が優れていたが, 麦茶残渣中の可溶性炭水化物 (WSC) が少ないため, FG1またはCA25添加区では無処理区と同様, 良質なサイレージの発酵が出来なかった. 一方, 両試験区の乳酸菌とセルラーゼ併用添加サイレージではともにpH値が低く, 乳酸含量が高い良質なものが調製され, 長期に貯蔵できることが明らかになった. また, 無添加サイレージに比べてその粗タンパク質含量が高く, 細胞壁構成物質含量が有意に低下した.
  • ―食味性, 理化学的および組織学的特性について―
    奥村 朋之, 犬塚 雄介, 小川 真理子, 小川 俊也, 中村 丈志, 井手 弘, 久保 正法, 西村 敏英
    2002 年 73 巻 2 号 p. 291-298
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    鶏胸肉の肉質改良を目的として, 除骨時間が及ぼす鶏熟成胸肉の食味性と理化学的および組織学的特性への影響を調べた. 屠殺1, 2, 4, 6, 時間後に除骨し, 0℃で4日間保存した胸肉では, 4時間後に除骨した胸肉がもっとも軟らかく, ぱさぱさ感も少ないと評価された. また, 6時間後のものも4時間後のものと同様に官能的に優れた食味性を有していた. 1および2時間後に除骨した鶏胸肉のドリップ率およびクッキングロスは4, 6, 24時間後に除骨したものより大きいことが判明した. このことは, 1および2時間後に除骨した鶏胸肉が4あるいは6時間後に除骨したものよりぱさぱさ感が大きいことと対応していた. また, 1および2時間後に除骨した屠体から取り出した胸肉の破断応力は6, 24時間後に除骨したものに比べて有意に高いことが認められ, 官能検査による軟らかさの評価と良く対応していた. 組織学的な観察から, 8もしくは16時間後に除骨した胸肉浅胸筋の筋原線維Z線間の距離は, 1時間後に除骨したものと比べ有意に長いことが明らかとなった. また, 後者の筋原線維には屈曲部分が認められ, 除骨後に硬直が進行したことが推察された. さらに, 屠殺後4時間以降に除骨を行うとZ線の脆弱化が促進され, 胸肉の軟化が速く進行することが推察された. これらの結果から, 屠殺後4時間以降に除骨を行うと保水性の低下が抑制されると同時に軟化が促進され, これまでの鶏胸肉より軟らかくてぱさぱさ感の少ない品質に改良できると結論された.
  • 井越 敬司, 小林 弘昌, 宮川 博, 工藤 康文, 松田 茂樹
    2002 年 73 巻 2 号 p. 299-304
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    発酵乳中のペプチドを明らかにするため, 市販ヨーグルトのペプチドについて調べた. ヨーグルトホエーから70%エタノール可溶性画分を調製し, ODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーでペプチドを分離, 分析した. その結果, 多数のピークが見出された. そこでこれらペプチドの一次構造をアミノ酸組成分析とN-末端側シークエンスから調べた. その結果, 24種類のペプチドが明らかにされた. 24種類のうち14種類はβ-カゼイン, 10種類はκ-カゼイン由来であった. αs1-カゼインからのペプチドは見出されなかった. β-カゼイン由来ペプチドはβ-カゼインの47から93および166から209, κ-カゼイン由来ペプチドはκ-カゼインの24から65, 107からC末端側の二つの領域よりそれぞれ得られた. 決定されたペプチドには既知のカゼイン由来機能性ペプチドと一致するものは見出せなかった. しかし, いくつかのペプチドはこれら機能性ペプチドを内在していた. また, 苦味ペプチド (β-CN (f192-209), (f193-209)) も存在した.
  • 高橋 栄二
    2002 年 73 巻 2 号 p. 305-311
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    活性汚泥処理は微生物機能を利用した浄化処理であり, 処理過程の微生物の数および種類は運転状態を反映する可能性が考えられる. そこで精密濾過膜を用いた豚舎汚水活性汚泥処理施設の曝気槽に存在するさまざまな微生物を計数し, 処理水質との相関を調べた. 曝気槽のpHと処理水質 (生物化学的酸素要求量 ; BOD, 化学的酸素要求量 ; COD, 全窒素 ; T-N, アンモニア態窒素 ; NH4-Nおよび亜硝酸・硝酸態窒素 ; NOx-N)は相関関係にあり, 曝気槽のpHと好気性菌, 脱窒菌および真菌数との間に正の相関関係が認められた. 処理水のBODは曝気槽の好気性菌, 嫌気性菌, 脱窒菌数との間に正の相関が認められ, 処理水のCODは曝気槽の真菌および放線菌数と正の相関にあり, T-NおよびNH4-Nは曝気槽の真菌数と正の相関にあった. 処理水のNOx-Nは曝気槽の脱窒菌, 真菌および鉄還元菌数のいずれとも負の相関関係が認められた. 本試験の結果, 精密濾過膜を用いた豚舎汚水活性汚泥処理施設の曝気槽におけるいくつかの微生物数は処理水質を反映していることが示唆された.
  • 高橋 栄二
    2002 年 73 巻 2 号 p. 313-318
    発行日: 2002年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    豚舎汚水活性汚泥処理施設から排出される処理水の色度に影響を及ぼす微生物の検索を行った. 処理水に嫌気性菌用およびLactobacillus用培地成分を添加し, そこに曝気槽汚水を添加すると色度 (刺激値) を上昇させることが示された. また, 曝気槽に存在する微生物数と処理水の色度との相関を検討した結果, 真菌, 鉄還元菌, 放線菌数はいずれも正の相関関係が認められた. また, 純粋培養したStreptococcus, 放線菌および真菌は色度低減に効果が認められた. 土壌微生物から検索した結果, 処理水に放線菌用培地を用いてそこに土壌を添加した時に色度は著しく低減し, BTB乳糖培地およびアンモニア同化細菌用培地を用いた時も色度低減に効果が認められた. 一方, 嫌気性菌用培地および真菌用培地を用いると色度の上昇が認められた.
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