日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
一般論文
動物介在活動中のイヌの行動と尿中カテコールアミン濃度によるストレス評価
堀井 隆行植竹 勝治金田 京子田中 智夫
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 74 巻 3 号 p. 375-381

詳細
抄録

本研究では,高齢者入居施設への訪問型の動物介在活動を調査対象とし,活動中におけるイヌのストレス状態を,イヌの行動観察と尿中カテコールアミン濃度により評価した.1.5~5.3歳のイヌ6頭(雄2頭,雌4頭)を供試犬とし,普段の生活でイヌが落ち着いているとき(T1)と30~60分間運動した直後(T2),活動前日(T3),活動当日の朝(T4),活動直後(T5)の尿を採取し,尿中カテコールアミン濃度を測定した.実質的活動時間,高齢者との触れ合い時間,行動・姿勢の制御時間,イヌの体格の各要因が,イヌの行動(あくび,パンティング,鼻舐め,前肢挙げ,嗅ぎ,拒否姿勢)に及ぼす影響について解析した.尿中カテコールアミン濃度に関しては,尿採取の時期,イヌの体格の両要因が,尿中アドレナリン(A)濃度,尿中ノルアドレナリン(NA)濃度,尿中ドーパミン(DA)濃度に及ぼす影響について解析した.拒否姿勢の生起時間割合は,行動・姿勢の制御時間が120秒以上の場合において,30秒未満の場合よりも有意(P<0.05)に長かった.また,拒否姿勢の生起割合についても同様の傾向(P=0.06)がみられた.拒否姿勢の生起割合と生起時間割合は,小型犬(体重 : 3.6~5.0kg)において,大・中型犬(体重 : 16.4~28.0kg)よりも有意(共にP<0.05)に多く長かった.パンティングの生起割合と生起時間割合は,大・中型犬の方が小型犬よりも有意(共にP<0.05)に多く長かった.尿中A濃度は,T5がT1, T3, T4よりも有意(すべてP<0.05)に高かった.また,尿中NA濃度は,T5がT1よりも高い傾向(P=0.10)がみられた.以上の結果から,動物介在活動中のイヌには何らかの軽度の心理的ストレスが負荷されている可能性が示唆された.また,活動中のイヌの行動が体格によって影響を受けていることもわかった.

著者関連情報
© 2003 公益社団法人 日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top