日本畜産学会報
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74 巻, 3 号
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一般論文
  • 徐 春城, 蔡 義民, 藤田 泰仁, 河本 英憲, 佐藤 崇紀, 増田 信義
    2003 年 74 巻 3 号 p. 343-348
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/06/16
    ジャーナル フリー
    麦茶飲料残渣を有効利用するため,容易に流通できる100L容のポリドラム缶サイロを用い,無添加処理(対照区)および乳酸菌+アクレモニウムセルラーゼ添加処理(添加区)して麦茶飲料残渣サイレージを調製した.貯蔵後245日目にサイロを開封し,発酵品質を調査した.また,チモシー乾草と市販濃厚飼料(乾物比で4 : 1)を基礎飼料として,さらに基礎飼料の1/4(乾物比で)を麦茶飲料残渣サイレージに代替して,6頭のメンヨウに給与してサイレージの栄養価を推定した.添加区は対照区に比べてpHが有意(P<0.05)に低く,乳酸含量は有意(P<0.05)に高く,長期間貯蔵でも品質は安定に保持された.また,添加区では対照区より細胞壁の有機物成分(OCW)が有意(P<0.05)に低く,細胞内容物の有機物成分(OCC)は有意(P<0.05)に高かった.添加区と対照区の乾物中の可消化養分総量(TDN),可消化粗タンパク質(DCP),可消化エネルギー(DE)はそれぞれ67.3%と65.1%,5.0%と4.8%,13.3MJ/kgと13.0MJ/kgであった.添加区のTDN,DCPおよびDEは対照区より高い傾向を示したが,有意差は認められなかった.
  • 五箇 大成, 戸田 克史, 野中 最子, 樋口 浩二, Agung PURNOMOADI, 永西 修, 寺田 文典
    2003 年 74 巻 3 号 p. 349-354
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/06/16
    ジャーナル フリー
    乳牛における産次・乳期による乳生産量の違いに対するインスリンの調節作用について検討するため,泌乳初期(5週)の初産牛(5頭)および経産牛(9頭),泌乳後期(30~33週)の経産牛(4頭)を供試し,グルコース(0.1g/kgBW),インスリン(0.2IU/kgBW)を頸静脈より投与し,投与前後の血漿インスリン,グルコース濃度を測定した.その結果,泌乳初期の乳量は,初産で経産より有意に少なく(P<0.01),経産牛の乳量は,泌乳後期で初期より有意に少なかった(P<0.01).グルコース刺激インスリン分泌反応は,初産泌乳初期で,経産泌乳初期より有意に大きく(P<0.01),インスリン基礎濃度も,初産泌乳初期および経産泌乳後期で,経産泌乳初期より有意に高かった(P<0.05).また,インスリン刺激グルコース減少反応は,経産泌乳後期で初産および経産泌乳初期より有意に大きかった(P<0.05).以上の結果から,産次・乳期による乳生産量の違いに,インスリンによる調節が働いている可能性が示唆された.
  • 徐 春城, 蔡 義民, 藤田 泰仁, 河本 英憲, 佐藤 崇紀, 増田 信義
    2003 年 74 巻 3 号 p. 355-361
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/06/16
    ジャーナル フリー
    緑茶飲料残渣を有効利用するため,無添加処理(対照区)および乳酸菌とアクレモニウムセルラーゼを添加処理(添加区)して緑茶飲料残渣サイレージを調製した.添加区のpHは対照区より有意(P<0.01)に低く,乳酸含量が有意(P<0.01)に高く,270日間貯蔵でも品質が安定して保持された.添加区の細胞壁の有機物成分(OCW)含量および酸性デタージェント繊維(ADF)含量は対照区より有意(P<0.05)に低く,細胞内容物の有機物成分(OCC)含量が有意(P<0.05)に高かった.また,生理活性物質であるカテキン類の含量も添加区の方が対照区より有意(P<0.05)に高かった.メンヨウでの消化試験によって求められた添加区の緑茶飲料残渣サイレージの可消化養分総量(TDN),可消化エネルギー(DE)は乾物中それぞれ71.1%,13.4MJ/kgであり,ビール粕と同程度のTDNを有することが明らかとなった.
  • 鎌田 八郎, 野中 最子, 柾木 茂彦, 高山 嘉晴, 甘利 雅拡, 竹沢 武春, 生雲 晴久, 小原 嘉昭
    2003 年 74 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/06/16
    ジャーナル フリー
    乳牛の妊娠期のセレン摂取量の違いが血中および乳汁中成分に与える影響を調べた.ホルスタイン種未経産牛10頭を用い,平均セレン含量0.02ppmの飼料(チモシー乾草,アルファルファヘイキューブ,脱脂粉乳,コーンスターチ)を基礎飼料とし,5頭には基礎飼料のみを給与し(無添加区),他の5頭には基礎飼料に亜セレン酸ソーダをセレンとして0.3ppm増になるように添加給与した(セレン添加区).両区とも試験飼料に馴致させたのち,人工授精を行い,分娩まで約280日間継続して飼育した.血漿中セレン濃度はセレン添加区が無添加区に比べ有意に高く,無添加区のセレン水準は欠乏域にあった.また初乳および胎盤中セレン濃度はいずれもセレン添加区で有意に高かった.しかし分娩1週間後の乳汁中セレン濃度は両区に差が見られなかった.また血漿中および初乳中IgG濃度は処理間に差はなく,白筋症(臓器や筋肉組織の崩壊)の指標になる血漿中GOT, LDHおよびCPK活性の増加も観察されなかった.さらに,甲状腺ホルモン濃度(サイロキシンおよびトリヨードサイロニン)は処理間で差は見られなかったが,インスリン濃度は無添加区に比べセレン添加区で高い傾向がみられた.ビタミンEが充足している場合,セレン欠乏のみでは白筋症および胎盤停滞は発生しないことが示されたが,0.3ppmの無機セレンの投与により分娩時の血漿中セレン水準は充足域に維持され,その後の繁殖性,抗病性に寄与する可能性が示された.
  • 山本 朱美, 伊藤 稔, 古谷 修
    2003 年 74 巻 3 号 p. 369-373
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/06/16
    ジャーナル フリー
    ブタの糞尿混合物からのin vitroアンモニア揮散量測定装置を用い,糞尿混合物のpHおよび尿中窒素含量がアンモニア揮散量に及ぼす影響について検討するとともに,当該装置の散布型脱臭資材の評価への適用を試みた.実験1では,培養開始時の糞尿混合物のpHを4~9の6水準に調整し,24時間におけるアンモニア揮散量および培養後の糞尿混合物に残留したアンモニア態窒素含量を測定した.実験2では,尿中窒素含量が2.6~9.2mg/gの範囲の6水準の豚尿を供試し,アンモニア揮散量を測定した.実験3では,市販の散布型脱臭資材(粉末,鉱物系)を糞尿混合物に0, 0.5, 1.0および1.5%添加し,培養開始時および48時間後の終了時のpH,およびアンモニア揮散量を測定した.得られた結果は以下の通りであった.実験1では,アンモニア揮散量は,培養開始時のpHが4の場合はゼロであり,pH 7まで直線的に増加した.24時間後に糞尿混合物中に残留したアンモニア態窒素量を含めたアンモニア発生量の総量はpH 5以上では有意差は認められなかった.実験2では,尿中窒素含量が2.6から7.4mg/gへ高まるにともない,アンモニア態窒素揮散量(平均値)は18から104mgへ直線的に増加した.実験3では,資材を0, 0.5, 1.0および1.5%添加した場合の培養開始時のpHは,それぞれ,6.77, 6.36, 6.10および6.06と資材の添加量の増加とともに低くなった.また,アンモニア態窒素揮散量(平均値)は,それぞれ,89.4, 65.6, 40.8および36.2となり,1.5%の添加で,無添加の場合に比較して約40%にまで低減された.以上の結果から,アンモニア揮散量のin vitro測定装置による測定では糞尿混合物のpHおよび尿中窒素含量が影響し,また,当該装置により散布型脱臭資材のアンモニア揮散量低減効果が評価できることが示唆された.
  • 堀井 隆行, 植竹 勝治, 金田 京子, 田中 智夫
    2003 年 74 巻 3 号 p. 375-381
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/06/16
    ジャーナル フリー
    本研究では,高齢者入居施設への訪問型の動物介在活動を調査対象とし,活動中におけるイヌのストレス状態を,イヌの行動観察と尿中カテコールアミン濃度により評価した.1.5~5.3歳のイヌ6頭(雄2頭,雌4頭)を供試犬とし,普段の生活でイヌが落ち着いているとき(T1)と30~60分間運動した直後(T2),活動前日(T3),活動当日の朝(T4),活動直後(T5)の尿を採取し,尿中カテコールアミン濃度を測定した.実質的活動時間,高齢者との触れ合い時間,行動・姿勢の制御時間,イヌの体格の各要因が,イヌの行動(あくび,パンティング,鼻舐め,前肢挙げ,嗅ぎ,拒否姿勢)に及ぼす影響について解析した.尿中カテコールアミン濃度に関しては,尿採取の時期,イヌの体格の両要因が,尿中アドレナリン(A)濃度,尿中ノルアドレナリン(NA)濃度,尿中ドーパミン(DA)濃度に及ぼす影響について解析した.拒否姿勢の生起時間割合は,行動・姿勢の制御時間が120秒以上の場合において,30秒未満の場合よりも有意(P<0.05)に長かった.また,拒否姿勢の生起割合についても同様の傾向(P=0.06)がみられた.拒否姿勢の生起割合と生起時間割合は,小型犬(体重 : 3.6~5.0kg)において,大・中型犬(体重 : 16.4~28.0kg)よりも有意(共にP<0.05)に多く長かった.パンティングの生起割合と生起時間割合は,大・中型犬の方が小型犬よりも有意(共にP<0.05)に多く長かった.尿中A濃度は,T5がT1, T3, T4よりも有意(すべてP<0.05)に高かった.また,尿中NA濃度は,T5がT1よりも高い傾向(P=0.10)がみられた.以上の結果から,動物介在活動中のイヌには何らかの軽度の心理的ストレスが負荷されている可能性が示唆された.また,活動中のイヌの行動が体格によって影響を受けていることもわかった.
  • 出口 善隆, 佐藤 衆介, 菅原 和夫
    2003 年 74 巻 3 号 p. 383-388
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/06/16
    ジャーナル フリー
    2001年7月18日から9月5日まで東北大学附属農場の飼料用トウモロコシ圃場においてビデオ撮影を行いクマの侵入実態を,また圃場での倒伏本数調査より被害実態を明らかにした.調査期間中の圃場へのクマの侵入は52回観察された.調査圃場では7月22日に雌穂出穂が5割に達した.侵入期間は乳熟前期と乳熟後期に有意に偏っていた(χ2=33.2, P<0.001).侵入時間帯も00 : 00から06 : 00までと18 : 00から24 : 00までに有意に偏っていた(χ2=36.5, P<0.001).調査期間を通じてのトウモロコシの被害割合は13.8%,1日あたりの被害熱量は169,171kJ/日で,クマ6.52頭分の日摂取熱量に相当した.クマは乳熟前期から乳熟後期までのトウモロコシ圃場に強い侵入動機を示し,その時期の栄養要求のほぼすべてをトウモロコシで満たしている可能性が示唆された.
  • 高橋 潤一, 梅津 一孝, 岸本 正, 西崎 邦夫, 河端 俊明, 小林 博史
    2003 年 74 巻 3 号 p. 389-395
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/06/16
    ジャーナル フリー
    BSE感染に対して未検査の廃牛などから製造した肉骨粉を付加価値の高い炭化物とする製造方法について検討した.またリンを揮散性の物質として放散させることなく炭化して施肥効果をもたせると共に,さらに,比表面積を大きくして吸着剤としての効果を発現させるという2点を高付加価値化の条件とした.従来の嫌気性下の炭化処理では,リンは水素化物となって揮散し,また,比表面積の増加もほとんど見られなかった.そこで,炭化工程における酸化還元雰囲気を調整して,リンの揮発性化合物化を防止すると共に,酸化力が賦与された雰囲気による比表面積増加の効果を検討した.その結果,800°Cの炭化処理において,一時的に若干の空気(例えば10分間にわたり,窒素ガス対空気1 : 1の体積比)を加えて製造した炭化物は,空気を混入しないで製造したものに比べて,炭化物表面のリン濃度,および比表面積においてかなりの改善(上述の酸化雰囲気例ではリン濃度で約15%,比表面積において約50%の改善)が見られた.炭化雰囲気をモニタリングし,酸化還元性を調整することによって,吸着剤として使用でき,さらに,施肥効果を有する従来にはない複数の機能をもつ炭化物(骨炭)が製造できるものと考えられた.
技術報告
  • 足立 憲隆, 宇田 三男, 小林 宏子, 阿部 正彦, 富田 道則, 稲葉 満, 林 登, 藤井 清和, 瀬尾 哲則, 野中 敏道, 清水 ...
    2003 年 74 巻 3 号 p. 397-405
    発行日: 2003年
    公開日: 2006/06/16
    ジャーナル フリー
    ルーメンバイパスメチオニン製剤の飼料添加が乳牛の産乳,繁殖および窒素排泄に及ぼす影響について,2年間で延べ81頭のホルスタイン種乳牛(2産以上,平均産次3.6産)を供試して分娩前4週から分娩後14週までとする飼養試験により検討した.対照区の飼料はチモシー乾草,ヘイキューブおよび配合飼料の混合飼料(TMR ; 設計値 粗タンパク質(CP)16.0%,非分解性タンパク質率35.1%,可消化養分総量(TDN)74.9%)を用い,メチオニン添加区(以下メチオニン区と略)は対照区飼料にDLメチオニン67%製剤を1日20g添加した.1年次(実験1)は飼料中CP含量が14.9%と設計値よりも低く,このため両区ともCP摂取量が少なくなったが,乳量および乳タンパク質量はメチオニン区が多く(P<0.01),添加効果が示された.2年次(実験2)の飼料中CP含量は16.0%と設計値どおりであり,飼養成績においては乳タンパク質率がメチオニン区でやや高かったほかに有意な差はなかった.摂取量から乳中移行量を差し引いて求めた糞尿中窒素排泄量は飼料中CP含量が低かった1年次の方が2年次に比べて72g少なかった.血漿中メチオニン濃度は,メチオニン添加により有意に上昇したが,その他の血液成分に差はなく,繁殖に及ぼす効果も明らかではなかった.以上のことから,ルーメンバイパスメチオニン製剤の適切な活用により,乳生産の効率化と低タンパク質飼料の利用による窒素排泄量低減の可能性が示された.
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