日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
一般論文
初乳形成に向けた乾乳期乳腺免疫機構の変動とラクトフェリンの関与
小峯 優美子小峯 健一貝 健三板垣 昌志植松 正巳木舩 厚恭小林 仁山口 高弘熊谷 勝男
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 75 巻 2 号 p. 205-212

詳細
抄録

乳用牛の乳汁成分は乾乳導入後,大きく変動する.乳汁タンパク質では,ラクトフェリン(Lf)が乾乳7日目にピーク値を示した.乳汁中体細胞数(SCC)は,乾乳15日目に400万/ml以上の値を示し,その多くは,CD11b細胞であった.すなわち,Lfが乳腺上皮細胞のアポトーシスを誘導し,その結果生じる乳腺の老廃組織が,増加した白血球により迅速に処理されていることが推察された.一方,CD4/CD8T比は乾乳導入直後から高値となり,そのピーク時期は,B-B2リンパ球数と同様,分娩20日前であった.また,移行抗体の主体となるIgG1は,分娩直前に最大値を示した.さらに,in vitroにおいて,ウシ末梢血単核球を用いたLfでの刺激培養によりCD4/CD8T比が高まった.このことから,Lfが乾乳期CD4Tリンパ球を誘導する可能性,すなわち泌乳期乳腺退縮後の乾乳期乳腺は,多くの報告にあるホルモンの他に,Lfの作用により急速に移行抗体産生器官に移行することが示唆された.

著者関連情報
© 2004 公益社団法人 日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top