酪農場において,搾乳施設で生じる洗浄排水(搾乳関連排水)が日々排出されている.膜分離活性汚泥法など既往の浄化方法は,現在の設計基準では中小経営にとって高価であり普及は見込めない.そこで本論文では,同排水の汚濁度合を下げて浄化施設の設計規模を縮小する一手法として,搾乳機器内に残る生乳(残乳)の同排水への混入を少なくする技術を検討した.現地事例調査では,搾乳パイプラインの傾斜角度が大きいほど排水に混じる残乳は少ない傾向であり,小規模試験装置によるエア回収試験では,配管傾斜角度よりもエア回収時間の長さが残乳量に影響を及ぼすことが示唆された.この結果を受けて,現地事例においてエア回収時間を5分から10分に延長したところ,同排水のBOD負荷量は平均で51%低下した.本検討によって,浄化処理施設の設計規模の縮小が可能となり,建設コストの低減が同排水の浄化システム普及に寄与すると考えられた.