日本畜産学会報
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86 巻, 4 号
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一般論文(原著)
  • 本谷 綾香, 足立 憲隆, 江波戸 宗大, 上垣 隆一
    2015 年 86 巻 4 号 p. 441-448
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    飼料用米(籾米,玄米)のサイレージ調製に,副資材としてフスマ,糖蜜,豆腐粕を添加した場合のサイレージ発酵品質を検討した.飼料用米を主原料に,フスマ,糖蜜,豆腐粕を副資材に,乳酸菌を添加し実験室規模でサイレージを調製し,25℃で86日間貯蔵しサイレージの発酵品質を比較した.その結果,籾米でも玄米でもいずれの副資材を用いてもサイレージ発酵は良好であった.しかし,フスマと糖蜜を副資材に用いたものは,かびの発生が多かった.さらに,飼料用米サイレージに豆腐粕を副資材にした場合の最適な混合比を検討した結果,籾米に対し豆腐粕を生重の割合で25〜75%混合したものは,加水なしでもサイレージ発酵は良好であった.以上,飼料用米のサイレージ調製に,フスマ,糖蜜,豆腐粕を副資材に使用してもサイレージ発酵品質への影響は認められず,豆腐粕の混合比は,飼料用米に対し豆腐粕25〜75%混合がサイレージ発酵に適していた.
  • 神谷 裕子, 加藤 直樹, 服部 育男, 野中 最子, 田中 正仁
    2015 年 86 巻 4 号 p. 449-455
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    塩素(Cl)含量の違いによりカチオンアニオンバランス(DCAD)値の異なるトウモロコシサイレージの給与が,ミネラル出納に及ぼす影響を検討するために,非妊娠乾乳牛4頭を供試して,クロスオーバー法による飼養試験を行った.トウモロコシは,カリウム(K)および窒素肥料において,塩素系(低DCAD区)または硫酸系肥料(高DCAD区)を用いて栽培した.トウモロコシサイレージのCl含量は低DCAD区で5.3 g/kg,高DCAD区で3.5g/kgであったが,K,ナトリウム(Na)および硫黄(S)含量には大きな差は認められなかった.トウモロコシサイレージのDCAD値は,低DCAD区で195.1mEq/kg,高DCAD区で267.8mEq/kgであった.低DCAD区では,高DCAD区と比較し,Cl摂取量および腸管での吸収量が有意に(P<0.01)増加した.腸管でのK, Na, S吸収量には,両区で有意な差は認められなかった.尿pHは低DCAD区で8.06,高DCAD区で8.22であり,低DCAD区で有意に(P<0.05)低かった.尿中へのCa排泄量は,低DCAD区で有意に(P<0.01)増加した.
  • 小橋 有里, 関 誠, 小宮山 智, 平賀 久芳
    2015 年 86 巻 4 号 p. 457-464
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    モヤシ製造工場から発生するモヤシ残さの飼料化を目的に,飼料特性を評価した.①モヤシ残さ,②破砕後モヤシ残さ,③加重脱水,④スクリュープレス1回脱水,⑤スクリュープレス2回脱水の5点の飼料分析を行った.また,変敗防止のための添加剤の必要性を検討した.さらに乳牛用飼料を想定し,in situ法により分解特性を評価した.モヤシ残さの水分含量は94.7%,破砕処理により89.0%になった.その後,加重脱水すると83.9%に,スクリュープレス脱水を行うと74.4%,再度スクリュープレス脱水を行うと65.8%にまで低下した.飼料成分はアルファルファ乾草に近似していた.また,乳酸菌を添加しなくても,原物重量あたり0.25%の76%ギ酸添加だけで3日間は変質しなかった.第一胃内での培養初期の乾物消失率は,チモシー乾草に比べ低く,脱水により顕著となった.また,第1胃通過速度定数を0.05/hとした場合,モヤシ残さの有効分解率は43-51%で,有用な飼料資源と考えられた.
  • 中村 正斗, 中島 恵一, 早坂 貴代史
    2015 年 86 巻 4 号 p. 465-472
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    ホルスタイン種初産牛における,TMR(完全混合飼料)の乳期別2種飼養(2群区)に対する一乳期1種飼養(1群区)の有効性を検討するために,それらの産乳性,栄養,体重および収益を比較した.TMRはグラスサイレージ,配合飼料,大豆粕からなり,1群区は一乳期をTDN72%,CP18%で,2群区は泌乳前期を1群区と同一とし,泌乳後期をTDN69%,CP15%で,各区9頭に不断給飼した.2群区は1群区に比べ,泌乳後期の産乳量,乾物摂取量,TDNとCPの充足率が減少し,泌乳持続性および乾乳時の体重とボディコンディションスコアが有意に低かった.2群区は,305日間の平均増体重がRichards成長曲線に基づく標準増体重を下回り,栄養不足が観察された.1群区は2群区に比べ乳飼比は上がるが,乳代から飼料費を控除した305日間の収益差額は1頭当たり14千円増益と試算された.
  • 谷口 紗耶, 王 蒙東, 池田 俊太郎, 吉岡 秀貢, 長瀬 祐士, 北村 祥子, 糸山 恵理奈, 村上 弘明, 小草 啓輔, 佐藤 健史, ...
    2015 年 86 巻 4 号 p. 473-479
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    牧草サイレージ主体で飼養した黒毛和種繁殖牛11頭を対照区および乾燥ニンジン区に割り当てて,乾燥ニンジン区では分娩予定日の3週間前から分娩日まで乾燥ニンジンを300g/日(β−カロテンとして138mg/日)給与し,繁殖牛の初乳と血漿中免疫グロブリン含量に及ぼす乾燥ニンジン給与の影響を調べた.乾燥ニンジン区および対照区の分娩直後の血漿β−カロテン含量は475および378μg/dLであったが,繁殖牛の血漿および初乳中β−カロテン含量には乾燥ニンジン給与による影響は認められなかった.繁殖牛の分娩直後の初乳および血漿中の免疫グロブリンG(IgG),免疫グロブリンA(IgA)および免疫グロブリンM(IgM)含量には乾燥ニンジン給与による影響は認められなかった.繁殖牛の血漿IgM含量と初乳IgM含量間に正の相関が認められ,初乳IgM含量と初乳IgG含量間,初乳IgM含量と初乳IgA含量間および初乳IgG含量と初乳IgA含量間にも正の相関が認められた.
  • 若松 純一, 加藤 亜也奈, 江副 美紗子, 西邑 隆徳
    2015 年 86 巻 4 号 p. 481-489
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    発色剤無添加乾塩漬食肉製品の主要色素である亜鉛プロトポルフィリンIX(ZnPP)について,低亜鉛飼料(5ppm亜鉛)における亜鉛の生物学的利用能を検討した.肝由来ZnPP(5L)区ならびに試薬ZnPP(5R)区の体重増加率は,ZnSO4(5S)区よりも有意に低く,Zn欠乏(ZD)区と同程度であった.肝臓,胸腺,骨格筋および毛では,群間で亜鉛含量に差はみられなかった.一方,血清,精巣,腎臓,骨および皮では,5L区と5R区との間で亜鉛含量に差はなかったが,5S区よりも同程度あるいは有意に低かった.また,5L区と5R区の血清アルカリホスファターゼ活性は,5S区よりも有意に低く,ZD区と同程度であった.血清および組織のマンガン含量は,5L区と5R区との間に有意差がみられたが,他のミネラル含量ではほとんど影響を受けなかった.以上のことから,ZnPPは無機亜鉛よりも生物学的利用能は低いのかもしれない.
  • 手塚 咲, 村元 隆行
    2015 年 86 巻 4 号 p. 491-496
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    浸漬液のpHが日本短角種牛肉の理化学特性に及ぼす影響について検討を行った.日本短角種去勢牛の大腿二頭筋を,pHが異なる等量の緩衝液に,それぞれ浸漬させて真空包装し,4℃で保存した.24時間後に各浸漬させた筋肉および浸漬なしの筋肉(対照肉)の保水性を求めた.また,加熱前に各筋肉および浸漬液の色調を測定し,加熱後に各筋肉のテクスチャープロファイル分析を行った.浸漬液のpHはテクスチャープロファイル分析の各項目に有意な影響を及ぼさなかった.クッキングロスは対照肉が浸漬させたものに比較して有意に低かったが,トータルロスでは対照肉とpH 6.86緩衝液に浸漬させたものとの間に有意な差は認められなかった.筋肉のL*値はRO水に浸漬させた筋肉が他のものに比較して有意に高かった.筋肉のa*値は浸漬させた筋肉が対照肉に比較して有意に低かった.pH 4.01緩衝液のa*値およびK/S525は他の浸漬液に比較して有意に低かった.
  • 河合 紗織, 猫本 健司, 干場 信司, 森田 茂
    2015 年 86 巻 4 号 p. 497-504
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    酪農場において,搾乳施設で生じる洗浄排水(搾乳関連排水)が日々排出されている.膜分離活性汚泥法など既往の浄化方法は,現在の設計基準では中小経営にとって高価であり普及は見込めない.そこで本論文では,同排水の汚濁度合を下げて浄化施設の設計規模を縮小する一手法として,搾乳機器内に残る生乳(残乳)の同排水への混入を少なくする技術を検討した.現地事例調査では,搾乳パイプラインの傾斜角度が大きいほど排水に混じる残乳は少ない傾向であり,小規模試験装置によるエア回収試験では,配管傾斜角度よりもエア回収時間の長さが残乳量に影響を及ぼすことが示唆された.この結果を受けて,現地事例においてエア回収時間を5分から10分に延長したところ,同排水のBOD負荷量は平均で51%低下した.本検討によって,浄化処理施設の設計規模の縮小が可能となり,建設コストの低減が同排水の浄化システム普及に寄与すると考えられた.
技術報告
  • 野月 浩, 小原 孝博, 新井 成之, 向井 和久
    2015 年 86 巻 4 号 p. 505-510
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    青森県の特産地鶏「青森シャモロック」の母方種鶏「速羽性横斑プリマスロック」と父方種鶏「横斑シャモ」に,トレハロースを重量比で1%混合した成鶏用配合飼料を給与し,産卵成績および孵化率等におよぼす影響を調査した.試験区分はトレハロース区および対照区とし,試験期間は140日齢から432日齢までの292日間とした.その結果,総産卵個数および正常卵の割合はトレハロース区が有意に高く,夏場8月から産卵後期にかけて顕著であった.また,9月から10月に貯卵した種卵では,受精卵がトレハロース区で有意に多く,長期間貯卵でも孵化率はトレハロース区が高い値を示した.このことは,種鶏に対するトレハロース混合給与が種卵生産個数や卵質の向上,夏場以降の孵化率の維持につながり,地鶏のコマーシャル雛の生産性向上に有効と推察された.
  • 山下 直樹, 阿佐 玲奈, 山田 一孝, 大井 幹記, 口田 圭吾
    2015 年 86 巻 4 号 p. 511-514
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    牛枝肉格付の歩留補正には菱形筋露出度が参考にされることがあり,その妥当性を検討するため,菱形筋面積の推移を調査した.材料には黒毛和種45頭の第6〜7横断面の高精細画像,第7肋骨頭側始端および第7肋骨尾側終端のCT画像を用い,各画像で菱形筋面積を算出した.その後,第6〜7横断面の菱形筋面積を第7肋骨始端の菱形筋面積で除すことで菱形筋面積の比率を算出した.菱形筋面積は第6〜7横断面から第7肋骨終端に向かうに連れて減少していた.さらに第7肋骨終端では全ての個体で菱形筋面積が10cm2以下まで縮小し,うち11個体では消滅していた.また,第6〜7横断面から第7肋骨始端までの距離が遠いほど菱形筋面積の比率も大きくなっており,切開位置が第7肋骨から遠いほど第6〜7横断面における菱形筋面積が大きい部分が露出していた.したがって切開位置によって露出度合いが異なる菱形筋を歩留補正に用いることは妥当ではないと考えられた.
  • 山下 直樹, 阿佐 玲奈, 山田 一孝, 大井 幹記, 口田 圭吾
    2015 年 86 巻 4 号 p. 515-519
    発行日: 2015/11/25
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    枝肉購買の際にウチモモの筋肉露出面(以下,オオモモ)の状態は重要視されている.第6〜7肋骨間横断面,サーロイン部分,オオモモにおける脂肪交雑程度の関連性およびオオモモの脂肪交雑程度とウチモモ内部全体の脂肪交雑程度の関連性を画像解析ならびにCT画像を用い調査した.材料には黒毛和種去勢牛20頭のロインブロック,ウチモモブロックを使用した.脂肪面積割合についてサーロインと第6〜7横断面ロース芯での相関係数はr=0.83と有意に高い相関を示した(P<0.01)が,オオモモとサーロインでの相関係数はr=0.46と中程度,第6〜7横断面ロース芯とオオモモでの相関係数はr=0.32と低く,有意性は認められなかった(P>0.05).脂肪面積割合のオオモモとウチモモ内部での相関係数は,ウチモモ1枚目において中程度(r=0.44)であったものの,その他の部位で相関係数は低かった.
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