熱帯・亜熱帯地域においては,乾季における飼料不足が,家畜生産を制限する大きな要因となっている.アフリカで生産された作物副産物の潜在量は膨大であるにも関わらず,サイレージとしての飼料調製は進まず,引き続き飼料不足が問題であり続けている.我々はアフリカで毎年多量に生産される各種作物副産物や牧草のサイレージの発酵への影響要因を解析し,微生物製剤の添加処理により高品質の調製技術を確立した.また牧草や作物副産物などの地域飼料資源を利用して調製した発酵TMR(Total Mixed Ration,混合飼料)は,乳牛の採食量,乾物消化率,乳量および収益性を改善した.さらに木本植物の共生微生物ネットワークと発酵メカニズムの複合関係や,微生物群集構造と代謝物との相互作用に対する各種添加剤の影響を探求することにより,サイレージの発酵制御につながる基礎的で重要な知見を明らかにした.これらの一連研究は,熱帯・亜熱帯地域における持続的畜産業を構築するための基礎および応用研究として貢献するものである.