抄録
余は馬の〓癖の原因が單に飼養管理の不良或は隣馬の〓癖の模倣等に依つてのみ發現するとの考へには未だ疑問の點が多々あると感じ,國有種畜牧場及び民間農場の馬に就て血統的に調査を行つて來た結果,大體次の如き成績を得た。
1. 馬の〓癖の普遍的發現頻度は1.1%である。
2. 〓癖素質を強く持つて居ると考へられた血統馬に於ける〓癖の發現頻度は7.1%及び8.3%であつた。
3. 〓癖素質を全く有しないと考へられた馬の血統中には1頭の〓癖馬も生産されて居なかつた。即ち〓癖は遺傳的特異素質を必要條件として發現すると考へられる。
4. 〓癖は輕種に於ては比較的早く,3歳頃より現われ,中間種其他では之より遲く,一般に5歳以後に現われる。
5. 〓癖素質は劣性遺傳の傾向を持つ樣である。擱筆するに當り本研究に對し御指導と御校閲を賜つた東京大學農學部名誉教授増井清博士に對し謹みて感謝の意を表すると共に,貴重なる材料を頂いた各國有牧場並に小岩井農場の各位に對し深謝す。