日本畜産学会報
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雄鶏の脈管豊多体(副生殖器官)の作用
西山 久吉小川 清彦
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1961 年 32 巻 2 号 p. 89-98

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抄録

雄鶏の副生殖器官排出液(透明液)は,脈管豊多体において生産されたリンパが,リンパ褶襞から排出されたものであり,また交尾器宮の勃起は,生産されたリンパの流入によつて起こることを,前に報告した.近年LAKEは,鶏の交尾器官の勃起が充血によつてひき起こされ,透明液も,充血した交尾器官をマッサージ法によつて強く圧迫する結果生ずるものであろうという意見を発表した.そこで本実験では,正常の雄鶏12羽および脈管豊多体を除去した雄鶏5羽のクロアカを開張して,電気刺激を与え,透明液が排出される部位を直接観察するとともに,脈管豊多体の機能を追求した.その結果は次のとおりである.
1. 脈管豊多体のリンパ生産能力は相当高い.10回の電気刺激により,平均779mgの透明液を排出した.活力ある個体(16g以上の睾丸を有するもの)では,1240mgが排出された.
2. 透明液の排出は,リンパ褶襞に限定され,交尾器官の勃起と時を同じくしていた.
3. 脈管豊多体を除去した鶏では,電気刺激によつてクロアカが充血したが,透明液の排出も交尾器官の勃起も,起こらなかつた.
4. クロアカ粘膜の各所に分泌細胞や杯細胞が認められた.しかしこれらの細胞からの分泌量はきわめて少なく,透明液の排出量に比べれば,無視し得る程度であつた.
5. これらの結果から,雄鶏の交尾器官の勃起や透明液の排出は,単なる充血や交尾器の圧迫によつて起こるものではなく,脈管豊多体で生産されたリンパに起因する性ものであることが明らかとなつた.

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