日本畜産学会報
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鶏における精液(精子)注入量(数)と受精率との関係
佐伯 祐弌
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1964 年 35 巻 tokubetu 号 p. 75-79

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抄録

1962年6月から1963年8月まで,毎月1回ずつ14区に対して総計210回の人工授精を行ない,6,305個について精液(精子)注入量(数)と受精率との関係をみた.精液の注入量は1回1羽当り,0.00125,0,0025,0.005,0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1および0.2mlの14区とし,各区に8~10羽の産卵鶏を用いた.受精率は精液注入後第1週目および第2週目まで,日別に調査した.各区とも,8~10羽の雄から採取した混合精液を用い,人工授精を終了してから1ml中の精子数を計算し,前記注入量にもとづいて注入精子数を推定した.
1. 分散分析の結果,第1週目の精液注入量別,日数別受精率の間に高度の有意差が認められた.1回1羽当り,0.005ml以下の原精液を注入した場合,第1週の平均受精率は50%以下であったが,0,01mlを用いると80%以上の受精率を示した.しかし,0.03ml以上の精液を注入しても受精率は上昇しなかった.
2. 精液注入後最高受精率がみられたのは第2日目(種卵は注入の翌々日から採取)で,その後は日数経過とともに低下した.とくに第2週目に入ると急激に低下し,その平均受精率は25%以下で,精液の注入量によって有意な差はみられなかった.
3. 注入精子数と第1週目の平均受精率との間には,精子数が150~500万の範囲のとき最も高い相関係数(r=+0.73)がみられた.精子数が150~1,000万の範囲ではこの関係がやや低くなり(r=+0.54),150~12,000万の範囲ではさらに低い関係(r=+0.39)となった.すなわち,注入精子数がある一定の限度までは受精率と密接な関係があるが,この限度をこえると大した関係はなくなる.
4. 個々の実験成績からみて,一般に精液の性状が良好なるときは原精液0.01ml(精子数にして5,000万)を1週1回注入することによって良好な受精率を期待することができる.しかし,精液の性状が余り良好でない場合は,0.02ml(精子数にして12,000万くらい)を注入するのが安全である.一般に,1回に多量の精液を用いて,注入間隔を長めようとすることは望ましい方法ではない.

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