日本畜産学会報
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レンゲ,大豆および大豆もやし中の植物性エストロゼンの同定
和田 宏湯原 正高
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1964 年 35 巻 tokubetu 号 p. 87-91

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抄録

この研究は,レンゲ,大豆および大豆もやし中の植物性エストロゼンを同定するために行なった.
試料中の植物性エストロゼンは,熱エタノールで30時間抽出した.エタノール抽出液は,葉緑素などを除くために,ベンゼンあるいは石油エーテルで,4回分液濾斗を用いて振盪した.エタノール層を濃縮し,エーテルで4回,振盪,抽出した.エーテル層を集め,飽和重炭酸ソーダ水で2回洗い,次いで蒸溜水で2回洗った.エーテルを蒸発させ,残溜物をクロマトグラフィーの試料とした.
試料中の植物性エストロゼンは,ペーパークロマトグラフィーと薄層クロマドグラフィー(TLC)によって同定した.ペーパークロマトグラフィーは,一次元上昇法で行ない,濾紙は東洋濾紙No. 50,展開時間は12時間,溶媒としては,酢酸:水(1:1)を用いた.TLCでは,ガラス板に塗布したメルクのシリカゲルGの薄層に試料をつけ,展開距離は10cm,溶媒としては,ベンゼン:酢酸エチル系(2:1)を用いた.
対照植物性エストロゼンとして,biochanin A, coumestrol, daidzein, formononetin, genisteinを用いた.クロマドグラムは,螢光下で観察し,対照植物性エストロゼンのスポットのRfと螢光の色にもとづいて,試料中の植物性エストロゼンを同定した.
この研究の結果,レンゲの抽出物中に,biochanin A,coumestrol, formononetin, genisteinの4種の植物性エストロゼンを同定したが,daidzeinの存在は疑問であった.
大豆の抽出物中には,上記の5種の植物性エストロビンを同定した.大豆もやしでは,biochanin Aを検出出来なかったが,他の4種の植物性エストロゼンを同定した.
大豆もやしでは,大豆よりも,coumestrolの螢光が明るく,スポットも大きかったが,一方,大豆中の他の植物性エストロゼンのスポットが大豆もやしのそれよりも,大きく,螢光度も強かった事は,興味深い.

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