日本畜産学会報
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異常乳の塩類均衡特にモレアの効果について(第I報)
宮辺 豊紀
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1965 年 36 巻 1 号 p. 8-16

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抄録
本研究の目的は塩類均衡,特にカゼイン•カルシウム燐酸塩に対するカルシウムと燐の動向とこれに関連する異常乳の安定性に及ぼすモレアの効果をしらべるために行なわれたものである.
搾乳直後の新鮮乳で酸度が正常であるにも拘わらずアルコールテストにより凝固する乳は一般に"低酸度アルコール不安定乳"という言葉で呼ばれているが,本報告ではこのような性状を示す乳のことを"異常乳"として表わした.
本実験の結果として,泌乳末期に異常乳を生産する牛に対してはモレアの治療的飼料としての効果はなかつた.そしてアルコール反応は弱から強陽性に変化した.この場合,異常乳中の可溶性カルシウムとカゼインの結合カルシウム量は正常値より遠ざかつた.しかし泌乳の初期に異常乳を生産する牛に対しては,乳中の全窒素中のカゼイン態窒素が増加するのみならず,カルシウムと燐の塩類均衡,特にカゼイン•カルシウム燐酸塩と関連する塩類均衡が正常値に近づくためにモレアの治療的効果が期待された.
7頭の供試牛から得られた正常乳の分析結果(標準値)は総蛋白質3.00%,カゼイン2.31%,全窒素中の カゼイン態窒素77%,総Ca 118.1mg%,限外濾過Ca 35.9mg%(総Caの30.7%に相当),総P 91.2mg%, 限外濾過P 31.4mg%(総Pの34.6%に相当),Ca:P の比率1.33,カゼイン1gに結合しているCaは35.6 mg,Pは26.0mg,結合Ca:P1.42であつた.
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