日本畜産学会報
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反芻家畜第一胃内のプロピオン酸生成細菌に関する研究
II. 各種条件下の第一胃内Veillonellaコハク酸脱炭酸能
扇元 敬司須藤 恒二
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1965 年 36 巻 11 号 p. 506-509

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抄録

Veillonella alcalescensのコハク酸脱炭酸能がルーメン内で増大する可能性について,めん羊ルーメン由来7SR-21株を用い検討した.
1. 該菌をコハク酸,酒石酸,乳酸を添加した培地で培養し,各培地の炭素源によつてコハク酸脱炭酸能が変化するか否かを検討した.その結果,本活性は培養時の基質には,大きな影響を受けないことを知つた.
2. 回分培養で得られた該菌のコハク酸脱炭酸能の経時変動は対数生育期の末期に最低となり,その後,漸増して48時間後,即ち平衡期にはQco2600以上となつた.この値は該菌の平均活性値のほぼ2倍である.
3. 該菌の本活性に及ぼすルーメン液の影響を検討するために,休止菌液を,(a) 高速遠沈で得た除菌ルーメン液と試験管内で嫌気的に37°Cで感作し,(b) 透析袋に入れ瘻管を通じてルーメン内に挿入し,透析性ルーメン液と感作した.その結果,本活性はルーメン液によつて保持され,増大するが,その程度は約2倍であつた.
4. 該菌とルーメン菌区分を混合した際の本活性を測定し,他の菌群の影響をみたが,特に増大しなかつた.
これらの実験の範囲内では培養されたV.alcalescensの本活性は比較的変動性が少なく,増強されることがあつても数倍にとどまり,ルーメン内V.alcalescensのコハク酸脱炭酸能が単離培養した該菌の活性に等しいと仮定して得られた計算値と,ルーメン細菌区分コハク酸脱炭酸能の実測値の間の大差を説明することが出来ず,従つて,ルーメン内コハク酸脱炭酸能に対する寄与は僅少であろうとの推論は否定されなかつた.

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