日本畜産学会報
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ホルスタイン種牛における乳頭諸形質と搾乳性との関係
内藤 元男正田 陽一小林 春雄福島 靖子野村 専治
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1965 年 36 巻 11 号 p. 496-505

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抄録

2場所に飼育されている泌乳前期のホルスタイン種雌牛,それぞれ20頭,9頭について乳頭諸形質と搾乳性とを測定し,それらの関係を求めた.
乳頭の形質としては乳頭長,外径,圧迫帯法による括約筋抵抗,円錐棒による開張孔径を,搾乳性としては,最高搾速,平均搾速,搾乳時間,最高時を測つた.
これら諸形質間の相関を単純相関と,搾乳量,泌乳期,産次を一定とした偏相関について調べ,さらに父または母を同じくする半きようだいについて級間級内分散分析により父母の影響の有無,半きようだい間の表型似通いの程度を検討した.
主な結果を要約すると次の如くである.
(1) 両場所での平均値から見ると,ホルスタイン種牛ではそれぞれ乳頭長5.7,7.4cm,外径は等しく2.9cm,括約筋抵抗0.32,0.29kg/cm2,開張孔径(1場のみ)3.00mmで,いずれも前報のジャージー種牛より僅かに大であつた.
(2) 搾乳性の代表値として最高搾速を示すと,それぞれ1.49(夕),1.98kg/分(朝)でジャージー種牛(朝)よりやや低かつた.
(3) 最高搾乳と最も関係の深い乳頭形質は括約筋抵抗で,雨場所とも,また単純,偏相関とも有意の負の相関があり,ジャージー種牛の場合より相関値は高かつた.
(4) 最高搾速と開張孔径との間では正であるが有意の相関ではなかつた.これは開張孔径が最高搾速と関連はあるにしても変異が小さいため,極端なものを除けば最高搾速にそれ程影響しないことを示す.
(5) 乳頭のこの2形質について,さらに互いに他を一定とした偏相関で最高搾速,平均搾速との関係を見ると,括約筋抵抗のみが有意であつて,上記の(3),(4)を裏付けている.
(6) 乳頭長,外径と搾乳性との関係は,極端なものを除けば機械搾乳では有意でないようである.
(7) 乳頭括約筋抵抗や搾乳速度などの形質では父母の影響が有意であり,遺伝の関与がかなり強いと推定された.
結論として,搾乳速度は開張孔径も関係はするが,最も関係の深い乳頭形質は括約筋抵抗で,搾乳性から逆に見ると,およそ0.28kg/cm2が最も適度な強さであると考えられる.またこれらの形質は育種の対象形質となるものである.

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