日本畜産学会報
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α-カゼインのトリプシン分解物の抗原性,およびその他の性質
II. 抑制反応の検討およびその応用性
高橋 富士雄鴇田 文三郎
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1970 年 41 巻 10 号 p. 507-512

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抄録

前3報にわたって乳成分の抗原性について沈降重層反応法,寒天ゲル内二重拡散法および免疫電気泳動法により検討してきたが,酵素分解により低分子となたった物質の抗原性の検出には適用できず,非沈降性抗原抗体反応および微弱な抗原活性などの検出法についての検討の必要性を感じた.本報はこれらの課題をin vitroおよカゼインの酵素分解とその抗原性びin vivoにおける抗原抗体反応の適用により,比較検討したものである.得られた結果は次ぎのとおりである.
1. α-カゼインは強い抗原性物質であるが,そのトリプシン分解物のpH4.6可溶性画分(F-S画分)の抗原性は著しく低く,沈降重層反応により微弱な陽性を示すが,寒天ゲル内二重拡散法および免疫電気泳動法では沈降線を検出できない.
2. しかし,このF-S画分はin vitroにおけるα-カゼイン-抗α-カゼイン血清反応系を強く抑制することが確認された.すなわち,この沈降抑制反応が酵素分解により低分子となった物質の抗原性の検出に有用である.
3. 間接血球凝集抑制反応は操作そのものに複雑さはあるが,これまで用いた抗原抗体反応に比べ,より鋭敏にF-S画分の抗原性を検出することができる.
4. in vivoにおけるPCA抑制反応では,感作に用いる抗血清は微量であり,F-S画分が比較的強い抑制を示すことが認められた.なお,この反応はin vitroにおける間接血球凝集抑制反応と比較して,研究目的によっては一層有用な反応であり,今後の乳成分の抗原性の検討に充分利用できる方法といえる.

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