日本畜産学会報
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鶏胚の発生過程における心電図波形と心形態
松井 寛二広瀬 昶沢崎 坦
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1975 年 46 巻 9 号 p. 522-530

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抄録

心機能形成の過程に現れる機能と形態変化との対応関係を吟味するために,鶏胚を材料として,ふ卵開始5日目からふ化までの17日間,A-B誘導による心電図を誘導記録し,QRS群の波形の変化と巨視的な形態の変化との関係について調べた。ふ卵開始9日目以後,心臓縦径と横径はほぼ一定の比率を保持するが,心重量は胚重量に対して9日目から19日目まで等成長,9日目以前と19日目以後は劣成長を示した。心重量に対する心房重量の比は13日目まで漸減し,以後安定するが,左,右心室重量の比はふ化当日まで漸減した。すなわち発生初期には心房と右室側が優位であるが,発生が進むに従って左室側が優位になる。心電図では,5日目は低電位であるが,2相性のP波とR型のQRS群が弁別でき,6日目以後電位が増大してP波が陽性となり,QRS群には陰性要素が加わり,11日目から15日目までにRS型に移行し,16日目以後にrS型となって安定する。P波とR棘の電位は9日目に極大値をとり,成鶏型の心電図は16日目以後に記録される。以上の成績から鶏胚における心機能形成は形態的にも,機能的にも,9日目と16日目に変曲点をもち,機能の完成は16日目ごろにあると考えられた。その経過の中で心電図波形に表れる変化は特殊心筋の発生の経過と対応し,各々の棘波の電位や持続時間は発生の経過の中で起こる固有心筋の量的な増大に対応すると考えられた。

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