日本畜産学会報
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ブタおよびウシ精子の雌生殖器内培養による呼吸能の増大ならびに精子被覆抗原の除去
入谷 明角田 幸生三宅 正史西川 義正
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1975 年 46 巻 9 号 p. 531-537

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抄録

ブタおよびウシ精子を一定時間種々の条件下の雌生殖器内で培養し,その後の精子の代謝能の変化や精子被覆抗原の除去の有無をしらべ,生殖器内における精子の受精能獲得に関する基礎的知見をうるための実験を行った.ブタ精子を発情豚の卵管や子宮の潅流液中で3時間培養すると,再洗浄後の精子の呼吸能は新鮮洗浄精子にくらべて有意に増大した.また屠殺直後の発情豚や発情牛から摘出した卵管および子宮内で培養した精子では,回収洗浄後の精子の呼吸能は上記の潅流液内培養の場合よりもさらに増大した.処理精子の呼吸能の増大と平行して精子被覆抗原が除去され,また精子の運動性の維持もすぐれていた.ことにブタ精子を生体の発情子宮内で3時間培養した場合には,回収洗浄後の精子の呼吸能は新鮮洗浄のものにくらべて約5倍にも増大し,また精子被覆抗原は完全に除去された.これらの結果からブタやウシの精子においても発情雌の生殖器内通過によって,ウサギなどにみられるごとき精子の生理学的変化のおこることが推定され,また本実験の条件下でも処理精子は,少なくとも初期の過程ないしは部分的に受精能を獲得しているものと推定された.

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