日本畜産学会報
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脂質代謝から見た,肉牛の育成ならびに肥育環境の肥育効率におよぼす影響
加納 康彦沢崎 徹
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1978 年 49 巻 3 号 p. 148-154

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抄録

日本短角種では,寒冷な山岳地帯において生産,育成された肥育素牛は,温暖な平地に移動して肥育することにより,寒冷な平地における肥育の場合に比べて肥育効率が脂肪交雑の増大という質的な面で向上することを既に報告した1).本調査では,寒冷地において実用化されている保温および換気に留意された無窓牛舎内における肥育効率について明らかにするために,日本短角種および黒毛和種を対象として,それらの血清中のグルコース,中性脂肪,遊離脂酸,燐脂質,総コレステロールなどの濃度を測定し,その結果を前記の調査成績と比較し,脂質代謝の面から検討した.日本短角種において,無窓牛舎内に肥育されている群は,寒冷平地肥育の群とは著しくその成績を異にし,温暖な平地に移動して肥育された群とは極めて類似した成績がえられた.このことから,寒冷地といえども,換気と保温によって適当な温度環境を与えれば,暖地に移動させて肥育した場合と同様に,肥育効率を質的に向上させることが可能であると推測された.また,黒毛和種について,寒冷山岳育成牛と,寒冷ならびに温暖平地育成牛との,寒冷平地,温暖平地および温暖な無窓牛舎内における肥育効率について,脂質代謝の面から検討した結果,山岳育成牛では,無窓牛舎における肥育により,その肥育程度が進み,脂肪交雑の増大という質的な面で,肥育効率が向上することが推測され,寒冷地における無窓牛舎の有効性が推測された.また,温暖平地において肥育されていた温暖平地育成牛には,上述の傾向が見られないところから,温暖環境下における肥育効率の向上は,山岳育成牛に特徴的なものであろうと推測された.

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