1980 年 51 巻 3 号 p. 159-164
ラット顎下腺はアンドロジェンの影響下にあることが知られているが,本実験では成熟雄ラットの顎下腺におけるアンドロジェンの代謝と経路をin vitroの方法により明らかにしようとした.ラット顎下腺では5α-水素添加酵素活性が高く,アンドロステンジオンおよびテストステロンはそれぞれ5α-アンドロスタン-3,17-ジオン,アンドロステロン,5α-ジヒドロテストステロン,5α-アンドロスタン-3α-,17β-ジオールに転換された.この場合,アンドロステンジオンの5α-ジヒドロテストステロンへの転換率はテストステロンの5α-ジヒドロテストステロンへの転換率よりも高い傾向を示した.次に,3H標識のアンドロステンジオンと14C標識のテストステロンを基質に用いて二重標識追跡実験を行った.5α-ジヒドロテストステロンの3H:14Cの値を基質の3H:14Cの値で除した値はインキュベーション開始後30分(5分,0.99;15分,2.22;30分,4.83)まで高まる傾向にあったが,その後60分(2.99)および120分(1.16)では低下した.