日本畜産学会報
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牛,山羊にみられる高カリウム型赤血球の遺伝子頻度と赤血球膜の特性
小松 正憲阿部 恒夫中島 功大石 孝雄印牧 美佐生
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1980 年 51 巻 3 号 p. 215-222

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抄録

黒毛和種,あか牛,無角和種,ホルスタイン種,ジャージー種の牛5品種とシバヤギ,ザーネン種の山羊2品種において,劣性遺伝形質である高カリウム型赤血球を持つ個体の検出を試み,その遺伝子頻度と赤血球膜の2•3の特性を明らかにした.赤血球のカリウム濃度は炎光分析により測定し,カリウム型を決定した.さらに数例の試料を用い,HK型とLK型の赤血球間で抗赤血球家兎血清に対する50%溶血性,低張食塩水に対する50%溶血性,凍結赤血球の回収率を比較した.HK型赤血球を支配する遺伝子の頻度は,黒毛和種:0.138,あか牛:0.190,無角和種:0.239,ジャージー種:0.263,シバヤギ:0,500,ザーネン種:1.000であり,ホルスタイン種にはHK型赤血球は認められなかった.牛,山羊の場合とも,遺伝子頻度の品種間差異がみられた.また,力リウム型別にみると,和牛はヨーロッパ系牛よりも赤血球中のカリウム濃度が低い傾向にあることが明らかとなった.抗赤血球家兎血清に対する50%溶血性と凍結赤血球の回収率には,HK<LKの傾向がみられ,HK型とLK型の赤血球膜の性質が異なることがわかった,ただし,低張食塩水に対する50%溶血性には,カリウム型間で差異が認められなかった.カリウム型と血液型との関係では,山羊Ma抗原は緬羊Ma抗原の部分抗原であり,この山羊Ma抗原には,Ma1とMa2(仮称)の亜型が存在することが明らかとなった.山羊のHK型赤血球には一部,anti-Maと反応しないものがあり,牛のHK型赤血球はまったくanti-Maと反応なかった.

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