本実験においては,妊娠期における母体の維持に要するMEおよびDCP量について,ラットを用いて検討し,あわせて非妊娠ラットにおけるそれらとの比較を行なった.供試飼料は,妊娠および非妊娠用として,それぞれ12種類(ME4水準とDCP3水準の組合せ)の飼料を用いた.供試動物は,ウィスター系雌ラット(体重約200gの未経産)80匹を供試した.ここでの維持に要するMEおよびDCPI量とは,エネルギーおよび蛋白質蓄積量が,ともに0になる時点のMEおよびDCP摂取量相当分とした.その結果,母体の維持に要するME量は,非妊娠ラットの場合とほぼ等しく,それぞれ129と127kcal/day/Wkg0.75であった.一方,母体の維持に要するDCP量は,蛋白質の蓄積量を正の領域で求めたにもかかわらず,非妊娠ラットの場合に比べて約5倍も高く,それぞれ6.91と1.30g/day/Wkg0.75となった.なお,妊娠末期の維持に要するDCP量たには,胎児や胎盤などの生産のために消費された蛋白質を含む可能性が推測されたので,本実験で算定した維持の蛋白質量から,生産に使われた分を控除することが,今後必要である.