日本畜産学会報
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エストロジェンによる鶏の脂肪組織の蓄積,特にその化学成分,脂質成分およびリパーゼ活性に対する影響
長谷川 信佐藤 一義氷上 雄三水野 利雄
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1980 年 51 巻 5 号 p. 360-367

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抄録

エストロジェンによる鶏の体脂肪増加の機構を調べる目的で,エストロジェン処理鶏の腹腔内脂肪組織を用いて,その化学成分,脂質成分およびリパーゼ(リポプロテインリパーゼとホルモン感受性リパーゼ)活性の変化を検討した.3週齢の白色レグホーン雄雛を用い,800μgの17-βエストラジオールを毎日7日間にわたって頸部皮下に注射した.エストロジェン投与により飼料摂取量および増体量に変化は認められなかったが,腹腔内脂肪組織量は有意に増加した.化学成分において,総DNA量に変化はなかったが,DNA単位重量当りの乾物量に有意な増加が見られた、さらち乾物成分のうち,乾物の約90%を占める脂質の増加が顕著で,対照区の約4倍の値を示した.また,脂質成分では,脂質の大部分を占めるトリグリセライドに顕著な増加が認められ,対照区の約4倍の値を示した,したがって,エストロジェンによる腹腔内脂肪組織量の増加は,主としてトリグリセライド量の増加に基づいた,細胞のhypertrophyによるものであることが示唆された.リポプロティンリパーゼおよびホルモン感受性リパーゼは,対照区に対して,おのおの約1/2倍および2倍の活性値を示した.すなわち,(リポプロテインリパーゼ)/(ホルモン感受性リパーゼ)活性比に減少が認められた.また,血漿トリグリセライド量は,エストロジェン投与により約40倍の増加を示した.以上の結果に基づき,エストロジェンによる,腹腔内脂肪組織における,トリグリセライドの増加機構について考察した.

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