日本畜産学会報
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プロテアーゼ処理β-ラクトグロブリンの天然抗原性
大谷 元
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1981 年 52 巻 1 号 p. 47-52

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抄録

ペプシン,トリプシンおよびキモトリプシン処理に伴うβ-ラクトグロプリンの天然抗原性(以下,β-Lgの抗原性という)およびその他の性質の変化をカゼインの場合と比較検討した.得られた結果は以下の通り要約される.1. β-Lgはペプシン分解に対して強い抵抗性を示し,β-Lgとカゼイン混合溶液(各0.5%量)をペプシンで12時間処理しても沈降重層反応によるβ-Lgの抗原性の低下は認められなかった.なお,同処理によりカゼインの抗原性は処理前の25%に低下した.2. トリプシンおよびキモトリプシン処理の場合も反応初期段階においては,β-Lgの分解性はカゼインの分解性と比べて低く,沈降重層反応による抗原性の低下もカゼインの場合ほど顕著でなかった.しかし,2時間以上のトリプシン処理または5時間以上のキモトリプシン処理では,両タンパク質共に類似した抗原性の低下割合を示し,各酵素で24時間処理した時のβ-Lgおよびカゼインの抗原性は処理前のそれぞれ6.25%および12.5%であった.3. 24時間トリプシン処理したβ-Lg溶液のSephadexG-100カラムクロマトグラムには,void volumeの位置に溶出する高分子のピークが認められた.4. β-Lgを各プロテアーゼ処理した時に生じる分子量約1万以下のペプチドには,PCA抑制反応においてβ-Lgの抗原性は殆んど認められなかった.

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