抄録
鶏胚錯綜筋(M. complexus)および大腿二頭筋(M. biceps femoris)において,胚発生に伴 う骨格筋線維の形態分化とその増殖機構を検討した.孵卵7日から14日にかけて形成される筋管(myotube)は,最初に形成される大型の一次筋管と,それに接するか,または周辺へ分離して新たに形成 される二次筋管に分けられ,これらの細胞増殖に2相性があることが明らかとなった.筋を構成する筋 線維の数は,これら筋管の胚発生中の増殖によって増加する.筋横断面に含まれる筋線維数の変化を, 孵卵10日から20日にかけて両筋で比較すると,両筋とも孵卵16日でほぼ筋線維数は最大値に達してい た.しかし,孵卵14日から16日にかけての筋線維数の増加率を比較すると,錯綜筋の増加率は,大腿 二頭筋に比べ,著しく低く,筋線維数は孵卵14日で,すでに最大値に近い値を示した.このような筋線 維総数の変化は,その筋組織内に含まれる筋線維の束,特に,その最も低次の単位である一次筋束内の 筋線維数の変化と一致していた.この筋束内に見られる一次筋管の数は,発生日齢を通じてほぼ一定で あり,しかも両筋の間でも,大きな差が認められない.しかし,一次筋管の細胞内小器管や筋原線維の 形態分化は,錯綜筋で著しく進んでいた.一次筋管の細胞径を両筋の間で比較すると,筋管の数の増加 が最も著しい孵卵10日から13日にかけて,差が認められなかった.一方,孵卵12日から14日にかけ て,二次筋管の総胞径を両筋の間で比較すると,錯綜筋の二次筋管は,大腿二頭筋に比べ,形態分化や 細胞径の増大が顕著であった.錯綜筋で見られる,このような二次筋管の著しい発達は,孵卵16日以後 において,筋線維数が増加しにくい現象と深いかかわりがあった.本報告では,胚発生過程の筋組織に おいて,筋線維の数の増加を制御する要因や,その機構を,二次筋管の発達程度と関連して考察した.