日本畜産学会報
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繁殖季節中の成熟雄ヤギ特異臭成分の同定について
佐々田 比呂志杉山 長美山下 恭平正木 淳二
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1983 年 54 巻 6 号 p. 401-409

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抄録

繁殖季節中に強く出現する成熟雄ヤギの特異臭について,成分の単離•同定を試みた.繁殖季節中に成熟雄ヤギ数頭から,特異臭が強く感知される頭-頸部の毛を刈り取り,クロロホルムーメタノール(2:1, v/v)で抽出した.続いて,クロロホルム層を冷アセトンで分画し,さらにアセトン可溶部をケン化した.ケン化画分をメチルエステル化後,GLC, GC-MS, IRおよびNMRで分析した.
特異臭は抽出•分画操作で最終的にケン化画分に集まった.GLCの結果で,20以上のピークが得られたが,顕著なピークは保持時間約4.5,7.5,13.5および23分に検出された.各種の機器分析で,これらの4つのピークは4位にエチル基のついた分枝脂肪酸,4-エチルオクタン酸,4-エチルデカン酸,4-エチルドデカン酸および4-エチルテトラデカン酸と同定された.有機合成を行い比較した結果,会成品と天然物は完全に一致した.合成品のうち,最も特異臭に近いにおいを持った4-エチルオクタン酸を用いた生物試験で,発情ヤギを含む成熟雌ヤギが興味を示し,成熟雄ヤギの特異臭がリリーサーフェロモンとして作用する可能性が示唆された.

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