抄録
妊娠中に卵巣除去を行なったマウスの乳腺におけるプロラクチンレセプターの増加機序を検討するため,in vitroにおいて蛋白合成阻害剤を含んだ培養液中で乳腺上皮細胞を短時間培養し,プロラクチンの特異的結合に及ぼす影響を観察した.妊娠13日で卵巣を除去し,24時間後に採取した乳腺を蛋白合成阻害剤の一つであるシクロヘキシミド(10μg/ml)を含んだ培養液中で4時間培養し,プロラクチンの特異的結合を測定すると,対照群に比べ46%まで減少した.この特異的結合の減少はシクロヘキシミドの濃度に依存していた.別の蛋白合成阻害剤であるピューロマイシンもシクロヘキシミドと同様の効果が認められたが,RNA合成阻害剤であるアクチノマイシンDにおいては特異的結合の減少は観察されなかった.泌乳0日の乳腺においてもシクロヘキシミドによる特異的結合の減少が観察されたが,泌乳4日や17日の乳腺ではシクロヘキシミドの効果は認められなかった.これらの結果より,泌乳開始時に新たに合成される蛋白が,乳腺中のプロラクチンレセプターの増加に関与していることが示唆された.