日本畜産学会報
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肉牛の脂肪分解•耐糖能およびインスリン感受性の肥育にともなう変化
佐藤 博常石 英作滝大 勇治西村 宏一
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1984 年 55 巻 2 号 p. 82-86

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抄録

牛の肥育にともなう糖質•脂質代謝の変化を明らかにするため,末経産の雌牛3頭を約10カ月間肥育し(仕上げ体重600~711kg),肥育の開始時,中期,末期に,ノルアドレナリン(NA;0.01mg/kg体重),ブドウ糖(0.2g/kg体重)およびインスリン(0.1U/kg体重)を静脈内に注射して血漿成分の濃度変化を経時的に調べた.NA注射後の血漿の遊離脂肪酸(FFA)濃度の上昇は肥育末期に弱かったが,遊離グリセロール(FG)濃度の上昇には特に肥育時期による差異を認めず,これは肥育末期におけるFFAの再エステル化亢進のためと考えられた.ブドウ糖負荷後の循環血液中からのブドウ糖消失速度(耐糖能)には肥育時期による差異を認めなかったが,負荷後の血漿インスリン濃度の上昇は肥育末期に著しく亢進していた.また負荷前のインスリン濃度も肥育末期に高かった.インスリン注射後の血漿ブドウ糖濃度の低下反応は肥育末期に減弱していた.牛においても肥育の進行につれてインスリン感受性の低下あるいはインスリン抵抗性が認められ,同時に膵臓からのインスリン分泌亢進を伴っていることが判明した.

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