日本畜産学会報
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蛋白質の消化に対するニセアカシア葉縮合性タンニンの影響
堀米 隆男大熊 哲夫牟田 誠
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1984 年 55 巻 5 号 p. 299-306

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抄録

蛋白質の消化率に及ぼすニセアカシア葉タンニンの影響について実験を行ない,次の結果を得た.(1) ニセアカシア葉のアセトン処理粉末を唯一の蛋白源としてラットに給与した時の蛋白質消化率は49.1%と低かったが,ポリエチレングリコール(PEG 4000)を添加したところ,蛋白質の消化率は70.7%と向上した.また,増体量,蛋白効率も改善された.しかし縮合性タンニンを含有していないビールカス粉末飼料では,PEGを添加しても蛋白質の消化率には変化はなかった.(2) ニセアカシア葉粉末飼料を給与した場合,給与PEGに対する糞中水溶性PEGの回収率は46%であったが,ビールカス粉末飼料を給与した時のPEGの回収率は91%であった.ニセアカシア葉粉末を給与した場合,摂取PEGはニセアカシア葉の縮合性タンニンと水不溶性の複合物を形成し,排泄されるために糞中水溶性PEGは減少し,それにともなって蛋白質はタンニンとの反応からまぬがれ,消化率が向上するものと考えられた.(3) ニセアカシア生葉から調製した粗タンニンを,カゼインを唯一の蛋白源とする飼料に混合し,ラットに給与して蛋白質の消化率を測定したところ,タンニン量が多くなるとともに蛋白質の消化率が低下した.この場合,タンニンを単に飼料に混合しても,蛋白質•タンニン複合物として給与しても,蛋白質の消化率低下には差異はなかった.また蛋白質•タンニン複合物の消化率はPEGの給与により改善することが認められた.なお蛋白質をニセアカシアタンエンと混合,65°Cで乾燥し複合物を調製した場合には,アミノ酸の損失は起らなかった.以上の結果から,ニセアカシア葉蛋白質の栄養価の低いのは,縮合性タンニンの存在により蛋白質の消化が阻害されるためであると考えられる.

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